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恋愛 / ラブ・ストーリー

君がいない世界なら、僕は生きていけない・17

   2017年3月7日  

 煉獄会では、白咲にまたブツを奪われたことに怒声をあげていた。

 白咲は頭をさげて謝罪しか言葉を吐くことができなかった。

 アンチズのたび重なるいたらずを放置していいものか、どうかと頭や幹部が集まって話しあっていた。

 総会長までアンチズというグループがどういう連中なのか、関心があるようだった。

 その中でも櫻梶の頭脳は煉獄会にとっても要であった。アンチズというグループについても、噂程度ではなく、あの連中がしでかしている事実を語り聞かせていた。

 一つ提案してみたが、周囲は全否定した。馴れ合うわけがないと。

 結論がでないようだから、総会長が決定打をくだした。

 殲滅の二文字を。

 そこへ扉をノックする乾いた音が広がる。
 
 

 一方、アンチズでは一本の電話が…

 

 煉獄会の幹部の松葉まつば そう(30歳)は事務所で白咲を見下ろしていた。

「おまえ、またしてもブツを奪われたのか」

 人相の悪さは折り紙つきだ。

「す、すみません…」捨てられた犬のように脅えている白咲は自分の情けなさにどんどん惨めになっていた。

「情けない、おまえはどこまでも赤子同然だな」松葉は容赦なかった。

「すみません…」白咲が一番最初に覚えた言葉は謝罪ではないか、と思わせるほど謝ることしかできない。

 松葉は呆れるようにとても深くて長いため息を吐いた。

「しかし、アンチズの若僧どもはいい度胸をしている」

 煉獄会の頭、櫻梶さくらかじ しょう(43歳)が納得するように柔らかい口調でいった。

「俺たちはその程度のいたずらに血相を変えるほど馬鹿ではない。大人だからね。しかし、ちょっと何度もされては困るものだ。しかも取引先に迷惑をかけているんだからな。お痛が過ぎたようだな」

「ですが、お頭…、このままでは示しがつきません。ここはガキ共を片っ端から締め上げるのが筋じゃないですか」松葉は反論した。昔ながらな極道の筋を言いはじめた。

 どいつもこいつも人相と口調が悪い。それがこの世界の言語である。

「わからないわけではないが…」櫻梶は考えていた。アンチズとの抗争はこれからも渋谷区域で活動をするのであればやはり駆除にかかるべきだ。

「そのアンチズか、どういうやつらなんだ?」煉獄会総会長、獄絡ごくらく 天陽てんよう(50歳)が重厚なデスクに似合う椅子にふんぞり返っていた。

「なんでも、悪さを繰り返しておもしろおかしく身勝手に生きているガキ連中です。メンバーは男だけで構成されています。でも恋人の女たちも参加しているみたいです。渋谷区内で事件を引き起こしては逃げまわって自分たちじゃないと言い放って、しかも他人に姿形が似ている奴になすりつける妙なやつらですよ」

 櫻梶はガキのいたずら程度にしか思っていなかったが内心はあらゆる飲食や店舗、地域住民の愚痴を聞いたこともある。

 電話一本で鼻をつまみ声色で難癖をつけては大クレームを告げる。もしくは第三者をリークして、こんな人相のやつは大悪党だから店に入れるな、とか言い放っていることをすでに耳に入れていた。

「お頭、よく事情をご存じてすね」弟分の住岡すみおか 国尾くにお(28歳)が口を挟んだ。

「なんだ、おまえはしらんのか。俺らは裏の世界にいて、裏の情報通でなければならない。この地域を危ぶむ因子は事前の詳細を頭に入れておけ、なにがどこで役に立ち、つながりを持つかわからないからな」

 櫻梶の頭脳戦術は群を抜いて煉獄会の要になっている。

「いえ、しっています。そこまで把握しているとはお見それしました。自由気ままに生きているどうしようもないことをして楽しんでいるだけでしょう。そのくせとんでもないことに首をつっこむ。白咲が煉獄会の構成員だと知っていてあえて襲撃してきたんですからね」

「ああ、まるで俺たちが麻薬の運び屋でもしているかのように裏路地でこそこそしているのを見て、証拠をぶん取ってやろうとしたんだろうよ」松葉が吐き捨てるように言った。

「性質が悪い」

 住岡は若い連中には顔が効いた。そのためこの手の話題なら櫻梶よりも十分に把握していた。

「そうだな、そのとおりだ。だからやつらを引き込むのはどうだ?」櫻梶が思わぬことを提案した。

「それはどうですかね、入っても俺たちのいうことなんて聞く玉ではないです。俺は反対です」住岡は拒否した。

「同じく…、さすがにあういう輩は一時的な衝動で悪さをしている。まともに社会で働いたとしても、その欲求からなにかしろバカげたことをしでかして俺たちが責任をとらされる。あの手の若僧どもなんて役に立ちません」松葉も否定した。

「そうか…」

 櫻梶は少し残念そうな顔をしたがこればかりは頭という立場を有利にすることはできない。民主主義どおり賛否両論の決議で進めるものだ。

 アンチズ同様、煉獄会も反社会主義だが社会派である。住み着いているこの街の不具合なことは、すぐに排除に回る。自分たちがどういわれようとかまわない。

 表だって生きている社会人が気にしないように暮らせるためにだ。

「それよか、まずは奪われたものを取り返せ。以前にもやられたことを思い出せ。いくら損していると思っているんだ? 農家や店舗の主から板挟みにあっているんだぞ。もうないと高を括ったのはこちらの落ち度だが、まったく油断をした矢先の襲撃だからな、やつらはどうしたって殲滅しなければならない」

 総会長の意思には全員が従うしかない。

「わかりました」

 正座をしている白咲はずっと押し黙り罰が下るまで微動だにせず呼吸も最小限にしていた。

「でも、たった二人にやられたってのは、ずいぶんと慣れたもんだな、おまえバカにされてるんだぞ」松葉が白咲に嗜めた。

「…はい」白咲は頭をあげることはできなかった。目蓋も強くつぶって全身が硬直していた。

 ひとまず全員がこの話題にひと息いれるように溜め息が広がった。

 

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