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恋愛 / ラブ・ストーリー

君がいない世界なら、僕は生きていけない・18

   

 作戦5、リナの荷物には白咲の包みが入っていた。動かぬ証拠に煉獄会はあとから突撃してきたアンチズの若僧共と衝突する。

 俺のイヤホンから互いの言い分が食い違っている声が交互に聞こえてくる。

 煉獄会は包みを盗んだなと一方的に言っている。

 アンチズは女を誘拐したなと豪語していた。だが、どこかアンチズはまさか相手が煉獄会総出で出向いてきたとはさすがにたじろいだ。

 誘拐したのは羽場戸先生と俺だ。煉獄会の包みを強奪したのも俺と先生だ。

 アンチズのアジトである酒屋に電話を入れて12月21日正午に返す、だがそれまでは預かる。せいぜい不安の日々を過ごすことだな、と一回目の電話で言った。

 今朝、酒屋に連絡を入れた。正午に渋谷駅から徒歩五分とかからない場所にいると教えた。本当に電話でしてみたら10分くらいまえのことだ。

 アンチズにしてみたら監禁場所は目と鼻の先だった。使われていない廃ビルの地下。都心だからこそ使われていないビルの一角は無数にある。これほどコケにされた気分はないだろう。アンチズのタクジは悔しがっていた。

 空調は生きている。エアコンもある。監禁は長く引き延ばすと管理する側が追い詰められる。せいぜい五日が限界だった。

 その拘束は俺がやる役目となったが、この捕らえたお嬢さんがわがままな性格で、あれ食べたい、これ食べたい、と部屋の中が広いこともありストレッチしたい。これでもスタイル維持はアパレルショップ店員としては印象値が大事なの、崩れたら責任とってもらうから。とまさかの脅しをかけてきた。

 さすがに俺は粋のイイ女子に圧倒されていた。

 羽場戸先生はこの五日間で説得しなければならない組織があった。そのための時間稼ぎに、俺は翻弄されっぱなしだった。

 挑戦状を送り付けたが場所は後日知らせる。と明記して送り付けたパンダの手紙。

 煉獄会は痺れを切らして駅付近を眼光を光らせ睨みつけるようにアンチズの若僧を見つけようと片っ端からそれっぽい若者に対面して恫喝していた。

 煉獄会が敵と知らずに日常を裏世界でいたずらしていたが日付をしっていたアンチズは静かに力を溜めてその日に備えていた。あとは場所と時間だった。

 両軍、俺と先生の戦略の盤上で踊らされていることもしらずに滑稽だというものだ。

“カチリ”。

「言い争いに収集がつかなくなって抗争がはじまる。互いに武器を取りだした。煉獄会はピストルが、まさかアンチズも同様に握っているようだ。驚いたな…」

 ピストルを構えたときに偶発的になった金属音だ。

「やっぱりこの取引は成功だ。お嬢さんが人質になって分が悪いはずのアンチズ、商いの卸をしている包みの手配をしているだけの煉獄会の手に…、これでは一方的に敗北するのはアンチズだな。でも、どちらかが滅べば未来によい影響を与える」

 羽場戸先生は俺の周囲に不幸は起きないと言った。だが、これでは結局この両軍が不幸になる。

「そ、そうですね」俺はイヤホンに意識を向けている。口もとは苦笑していた。

 望まない結果になりそうなのが嫌だった。

 煉獄会とアンチズはそれぞれの言い分に矛盾がよぎるなか、戸惑いながらも対峙してしまってはやるしかない。混乱はさらなる混乱をよぶものだ。

“八つ裂きにしてやる!”。

 どっちかの若い男の声が合図となり握ったピストルの引き金を引く、その瞬間だった。

「もういいだろう」羽場戸先生は突如、つぶやいた。

 扉が派手な音を立てて、第三の組織が殴りこんできた。

「そこまでにしろ!」

 俺はどこの誰が介入してきたのかわからなかった。すべて先生にゆだねていた。でも、その声はとても真の通った間違いなく正当性のある声質だった。

 防弾チョッキ、ヘルメット、完全武装した組織が突入してきた。

「先生がいっていた第三の組織って」

 恩師は笑みを浮かべた。「警察だよ」

「先生、よく説得しましたね」俺も笑顔になった。

 この瞬間のためにこの五日間奮起してきた。目の上に浮かぶ。羽場戸先生がいつもの調子で戦略打開の切り札を交渉するために訪れ対面している光景を。

「おかげで憔悴したのはこちらだ」羽場戸先生は自嘲するように笑ってみせた。

 

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