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風刺 / ユーモア

手本にさせたい人たち

   

「理想的」と周りからも評判の三人組がいた。一人は学校の授業からクラブ活動まで隙なくこなし続け、若くして管理職兼実業団選手となった。もう一人は脇目もふらずに野球に打ち込み、独立リーグを経由してプロとの育成契約を結ぶに至った。そしてもう一人は学校を出てから冒険を続け、見聞を広めていた。

そんな三人だったからこそ、一年ぶりの再会を楽しんでいた山中にUFOが墜落しても、嫌な顔すら見せず救助を行い、面倒を避けるべく周囲との連絡も取らず済ませることができた。

一方、助けられた宇宙人たちは心底感謝をしつつ、彼らの脳内にその時あった願いを叶えることにした。

それは、樋口の宇宙への冒険と、杉浦と保科が抱いていた「自分以外の人も、この尊敬できる友人を手本にすればいい」というものを実現することだった。

宇宙人もまた邪心を持っておらず、数年間の冒険を経た樋口とともに、再び地球に戻ってくることにしたのだが……

 

「本当に、何と申し上げて良いか、……助かりました」
 杉浦、保科、樋口の仲良し三人組に向かって、身長一メートルほどで、銀色の肌を持つ「彼」は、りゅうちょうな日本語で思いを述べた。
「そんな気にしなくってよ、大丈夫だって。俺らだって時間あったし、全然面倒でもなかったからな」
 杉浦の言葉に、銀色の「彼」の二倍以上の体格がある保科も頷いた。
「まったくだ。いい思い出というやつだよ。樋口がいたんだから、この程度のことは厄介ですらない。単なる思い出だ」
「あっ、ああ、心配しないで下さい、僕ら、誰にも言ったりしませんから。今三人で会ってること自体、秘密にしておきたいとこもあって」
 と、少し慌てたように付け加える樋口は、三人組の中ではもっとも背が低く華奢で、アイドルグループにいる少年のようにさえ見える。
 しかし、いざという時の動きは、身長二メートル十五センチにして、手動計測で五十メートル走五秒五の超身体能力を誇る保科よりもずっと素早い。
 元々の素質もさりながら、学校を出てからの数年間、極めて危険な冒険を昼夜問わず行ってきたために、超人的な身体能力を得ていたのだった。
「あ、ありがとうございます、お三方っ。……申し訳ありません、まだあなた方の言語に対応してはおらず、少し不自然で」
「いいって。しっかし、さすがに文明ってのは便利にできてんだな。俺にもその力があれば、英語の授業が楽だったんだけどな」
 といった感じの軽口を叩いて笑う杉浦だったが、周囲に圧をかけないために身に染みこませた軽い態度とは裏腹に、彼は物心ついた頃から努力というものを怠ったことはない。
 だからこそ、元々は運動音痴ながらも、高校の軟式野球部でレギュラーを掴み、かつ学年トップの成績で生徒会長という離れ業を成し遂げることができた。
 大学に入ってからもひたすら部活と学業に打ち込み、今ではある会社の幹部として辣腕を振るいつつ、軟式野球の実業団選手として活躍するまでに至っている。

 

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