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異世界ファンタジー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編 第1話「巡り合いの地へ」

   

 
「兄様と全然違う。シアンくらいの歳なら、大体皆こうなのかしら……」

 私は眠っている間に、いつの間にか十二歳になっていたが、シアンは意識のある状態で二年間を過ごしている。空白の十年間があるにしろ、肉体年齢は二十歳かそこらだろう。

「難しいな」

 彼への気遣いを考えている内に、いつの間にか遠くの方に薄っすらと、町のような影が見えて来た。私は慌ててレベイの元へと向かう。

「レベイさん! もしかしてあれがアヴァランですか!?」
「おー、見えて来たね! もう一時間くらいで着きそうだよ!」

 シアンの船酔い騒ぎもあったせいか、航海がとても短く感じた。少し名残惜しい気がして、辺りを見回す。

「あの、何か私にお手伝い出来ることってありますか?」
「ん? いや、大丈夫さ。それよりシアン君の様子はどうだい?」
「それが……その……部屋から追い出されてしまって……」
「ハハッ! そりゃあ男の意地だろうなぁッ! 恥ずかしいんだよ、きっと!」
「そう……なんでしょうか……」

 レベイの言葉を聞いて首を傾げながら、私はそう口にした。
 『男の意地』――――。私にはよくわからない感情だった。

「私、もう一度様子を見て来ます」
「あっ、それなら、地上に降りた時に上手く歩けないかもしれないから、気をつけるように伝えてくれるかい?」
「ありがとう。伝えますね」

 レベイに背を向けて歩き出す。

 もしかしたら、二年前のあの時も、シアンは今と同じように苦しい思いをしていたのかもしれない。そんな中で、私を生かす為に戦っていたのだとしたら、見抜けなかった私は彼の同行者としては未熟だと言わざるを得ない。と、今までの私ならそう考えて、部屋の前で立ち尽くしていたのかもしれないが、今は違う。わからないのなら、聞くしかない。全てを理解し支え合うことは、今の私達では無理だから。だが、知りたいと思う。私を守ってくれるシアンのことを――――。
 共に生きると決めた以上、踏み込まないままではいられなかった。

「シアン、入ってもいい?」
「おー……」

 声は少し、苦しそうだ。だが、中へ入ってみると、先程よりも顔色のいい彼がいた。私は安心して、飲み物を渡す。

「胃にいいそうよ。レベイさんがくれたの。飲んでみて」
「へぇ、香りがいいな」
「あと、船から降りた時に上手く歩けないかもしれないから気をつけてね」
「平気だ。あー……エリザ」
「はい?」
「さっきは悪かったな」

 私はその言葉を聞いて僅かに目を見開いた。そして、拳を握り締める。

「――――それ、嫌だわ」
「あ?」

 私の声に彼が顔を上げる。

「だって、悪いことじゃないもの」
 

 

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アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編 第1話第2話第3話第4話第5話

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