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伝奇時代

生克五霊獣-改-29

   

 その昼過ぎ。最初に起きてきたのは新月だった。
 皆の様子がおかしいの気付いた。
「皆、どうして泣いているの?」
 言いながら、お蝶の姿が見当たらないことに気付く。買い物でも行っているのかと思った。
「何か、悲しいことがあったの? お蝶さんは、いつ帰るの?」
 葛葉は、泣きながら新月を抱きしめた。
「お蝶はな、もう帰れないのだ。だから、皆泣いているのだよ」
「何処に行ったの?」
「遠い、遠いところだ」
 静かな屋敷を見渡して、新月は察した。今までそうだったように。そして、じんわり溜まる涙を堪えて、蜃を探した。
 ドタバタと部屋中を走り回り、離れの方の部屋でようやく蜃を見つけた。見付けて、その背中に飛びついた。
「新月か?」
 その声は力なく、泣き過ぎたせいで枯れて聞こえた。
「今は、お前を慰められないよ。ごめんね」
 けれど、新月は蜃の背中に蹲ったまま泣くのを堪えていた。
「お前は、お蝶と仲が良かったもんな。いつかお蝶が言っていたよ。妹みたいだって。一緒に泣こうか」
 それから、2人でどれだけ泣いたかはわからないけれど、気付いた時には次の朝を迎えていた。

 

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