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現代ファンタジー

なな★しき ~次元管理員 七尾と志紀子~ 第18章 足音の向こう側

   

志紀子の助けを借り、基地内の故障などに見舞われながらも、何とか基地上層へと戻ったグランバル。

短い休息をとれることになった志紀子は、七尾にある“お願い”を切り出す。

一方のグランバルは、治療室へ向かいながら、ある人物と合流し……。

 

 次元癖の壁は、あれほどの激戦がウソのように静まり返っていた。
「──おじいちゃん!」
 その空間に、志紀子が一瞬で姿を現した。手には救急道具と、背に折りたたみの担架が担がれている。
「志紀子。お前、本当に」
 大丈夫なのか。そう言いかけたグランバルに手のひらをかざして制し、笑顔を見せる。
「よかった。大きなケガはないみたいね」
 ところどころ青あざや小さな傷はあるものの、動けなくなるような負傷はないようだ。
「問題は……」
 一方、近くで横たわるオリバーは、両腕両足とも布でぐるぐる巻きである。
「うわ……」
「運ぶのが大変になってしまうが、こいつの性格を考えると、こうせざるを得なかったんだ」
 逃げ道を残さず諦めさせるため、わざと斬った。そう明かして息をつくグランバルに、当のオリバーが宙を仰ぎながら言う。
「別に、私を置いていってもかまわんぞ?」
「は?」
「足手まといは切り離す──これは私の持論であり、我が身も例外だとは思っておらん」
 変なところで律儀とでも言おうか。うすく笑って目を閉じた。
「……」
 そんなオリバーをじっと見ていた志紀子が、盛大なため息を吐きながら近づいていく。当然、足音に気づくオリバーだが、目を開くことはない。ただ安らかな笑みを浮かべているのみ……
「バーカ」
 呆れたとばかりの、声の刹那に。

 ──バチーンッ!

「うぐっ!?」
 軽快に弾む衝撃音と同時、額に鋭い痛みが走ったのである。
「っ、……!?」
 志紀子から渾身のデコピンが放たれたのだ。うっかり全身をビクつかせたせいで、手足の傷にも響いた。
「……っ、なにを」
「ゴチャゴチャうるさいよ、オリバー・サイボルト」
「!」
「私とおじいちゃんが、犯罪者の持論とやらに聞く耳なんか持つと思ってんの?」
 と、救急道具の中から取り出した注射器を、手際よくオリバーの腕に刺したのである。
「何だ……?」
「止血剤入りの全身麻酔だって。次元管理機構の指示で持たされたの」
「……」
「あぁそれと。あなたの連れてきた部隊は、全員潰したからね」
「そう、か。なら──……」
 もう楽しめることもなさそうだな。そんな呟きを残し、オリバーは瞬く間に眠りに落ちたのだった。

 

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