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風刺 / ユーモア

もっとも効率的な

   

ネット通販に押されて、なかなか難しい状況がある小売業界。とは言えその中でも勝敗は明確にあり、売れない商店を経営する須藤は、地元の幼馴染たちからイジられる立場だった。

そこで周りを出し抜くべく、須藤はAIで理想の立地を探し出し、商品の陳列を行っていくサービスに手を出した。そのシステムは明らかに有能そうであり、大金をはたいて導入を決定するのだが……。

 

「いかがですか、社長……? 大体、こういった感じになってくると解析されますが」
「こ、これは凄いっ。記憶の通りだ、全部!」
 看板すら出していない、ちょっと怪しいオフィスの中で、四十五歳になる須藤は興奮の声を上げていた。
 彼が覗き込んでいるのは、普段は見ることもない大型PCのモニターである。
 須藤が昔見たSFアニメのそれに、どことなく似たデザインを持つマシーンは、まったく理解できない数式を表示してから、街の人の流れを示してみせた。
 それも今現在の流れではない。三十年前、彼が「奉公」に出た須崎商店で働き出した頃の、昭和の匂いが色濃く漂う、南町駅と、南町中央商店街の人の行き交う様子である。
「ど、どうしてこんなことが……!」
「難しい話ではありませんよ、須藤社長。我々が独自開発したスーパーAI、『効率インフィニティ』一号機を使えばね。町のデータと地図を読み込むだけで、こういったことができるんです。例えば、地図を新しいものに刷新すれば……」
 若いスーツ姿の男がPCを操作してみせると、途端に人の流れが変わった。
 駅前には人が多く来るようになったが、商店街に赴く人は少ない。
 大型のショッピングモールとイベント会場が、駅前再開発で誕生したからだ。
「凄い。完全に今の南町商店街だ。本当に困っているんですよ、あのデカい店ができてからね。特に僕らのような、まだローンがたっぷり残ってる新参にとっては、死活問題ですよ」
「ええ、承知しておりますとも。だからこそ我々は方々手を尽くしてシステムを構築して、この最新AIを世に送り出しました。大口の融資を引っ張る前に、まずは実績をということで、親が住んでいたこの町で働くことにしました」
「頼みますよ……」
 須藤は、若者の不遜とも言える物言いに、反発心を抱けないほどに疲れ切っていた。
 いや、疲れていたのは彼だけではない。商店街の皆は終わりの見えない最新商業施設、つまりは大資本との戦いに疲れ切っている。
 もっとも、代々この町で商売をやっている連中に比べてば、「外様」で、店のビルと一緒に借金まで背負うハメになった須藤のような人間の方が当然厳しい。
 だからこそ、コネを伝って怪しい話を見つけ出したのである。学会から追放された天才が、強烈なAIの「被検体」を求めているという。
「もちろん、お任せ下さい。私どもが求めているのは、実績であり困難への挑戦ではありませんからね」
 と、自信満々に言い切りさらにキーを高速で操る彼が学会を追放されたのは、能力ではなく態度が理由だったと須藤にもすぐに分かった。
 見慣れた町並みを簡略化した地図内で、いくつかの建物が赤く輝き出した。海外映画などで良く見た雰囲気だが、画面中に英語は一切登場していない。

 

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