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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理 【ぼくらのガーベラ】3

   

 輪都は遠い親戚のように馴染んでいた。御影は傍ら内輪の話しに耳を傾けるだけだった。

 杜坂巡査長と会話を弾ませていた。これほどよく口を動かす輪都はめずらしかった。

 依頼である盗難事件については、杜坂の胸の内側に留めるだけにしていた。と輪都に囁いた。

 それはあってはならない怠慢であるとおもっているが、警官の優しさがにじみ出ている言いわけに輪都は同情した。

 そんな話が聞こえていないわけがない御影探偵の表情は、とても悲痛な雲行きだった。

 すでに推理は解けていた。

 そして犯人も…

 

 御影は黙って内輪での話しのやりとりをマジマジと見ていた。

 輪都ですら気のいい雰囲気に口を挟みこみ共感していた。まるで遠い親戚の家に帰ってきたようにだ。

 輪都は杜坂と、いつになく会話を弾ませていた。探偵側としてどのくらい進んでますか、証拠らしいものや手がかりはありましたか、とやけに深入りしてくる。責任を感じてのことだろう。

 すると輪都にこんなことを耳打ちした。家族たちが談笑しているときに輪都の傍に近寄って会話をつづけているがあることを言った。

「実は今回の盗難事件はわたしの胸だけに押し留めてまして、警察署に伝えてはいないんです」

 職務怠慢と思ったが、つぎの言いわけがましい言葉に輪都はすぐに冷静さを保った。

「なんでですか?」

「この家で盗難事件が起きたとひろまれば周囲のご老人だけの家も多く、かなり脅えてしまいます。だからパトカーがサイレンを鳴らしてこのあたりを聴き回っている光景が眼にはいれば、きっといい気分にはならない。ふがいないけどわたしが検証して犯人をとおもったのですが、証拠はなに一つあがらなかった。それに被害はこの一件のみ、連続して起きるのであれば、犯人像も浮かびやすいのですが…、だからとりあえずは穏便にすませることにしたんです」

 何度も輪都は頷いている。きっと同情から警官の優しさを理解したような頷きだった。

 警官は輪都にわかってもらえて安堵していた。批判されるかと思っていた。都会の冷淡な人間性にちょっとだけ気にやんでいたのかもしれない。

 おそらく長く警官をしているとそういう血も涙もない現場を目の当たりにしたり、これまでの事件においてそういう報告を受けて、杜坂は警官という立場を忘れ、一人間として感傷したのだろう。

 とても優しき人だ。輪都はうっすらと眼に熱いものを感じた。

 

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