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伝奇時代

生克五霊獣-改-38

   2018年4月17日  

『この屈辱、晴らさずおくべきか』

 恐れていた2人が、再び復活してしまい……⁉

 時代伝奇ストーリー!

 

「そうだな。お前達の方が先に出て行ってしまうことになるんだよな」
 寂しいのか、と理解したが、そうではないと新月は主張するように言った。
「誤魔化さないでください。私は、新月は蜃様のお嫁さんになりたいとずっと思っていました」
 思わず、蜃の呼吸が止まった。可愛い妹としか見ていなかった少女が、この瞬間少しだけ大人に見えた。考えれば、体型にしろ顔にしろ、もう既に可愛い妹の少女な面影など消えようとしているのだ。
「いつから、そう見ていた?」
「わかりません。でも、葛葉様に言われて最初に浮かんだのは蜃様でした」
「俺は、旬介とお前が夫婦になると思っていたよ」
「……私も、そう思っていました。それに、今もそう思っているのかもしれません」
「旬介は、嫌か?」
 新月は、首を左右に振った。
「蜃様の気持ちを教えてください」
 2人の間に、暫く無の空気が流れた。
 そして暫くの後、蜃は新月の頭を優しく撫でた。
「お前の気持ちは嬉しいが、やっぱり俺は旬介からお前を取れないよ」
 新月の目から涙が零れ落ちた。
「ごめんな。それに、俺は一生嫁を娶る気は無いのだ。俺の中には少なからず、鬼の血も流れる。もし子宝に恵まれ、その子も、そのまた子へと鬼の血が続いたとして、何れ恵慈家の血が鬼の血に呑まれてしまうとも限らん。母上も父上も、恵慈家の血は呪われたモノとして考えておる故な、もう終わりでいいと思っているのだ。それに本来であれば何も知らず、幸せに生きる筈だったお蝶だけに荷を負わせるつもりはないのだ。俺も共に背負うと誓ったから、俺は誰も嫁には取らん」
「では、最後に聞かせてください。もし、蜃様が恵慈家の人間でもなく、鬼の血もない普通の人だったとして、お蝶姉様が病気とかそういうので亡くなってたとしたら、蜃様は私をお嫁にしてくれましたか?」
 蜃は、苦笑いをした。
「それを答えたら、俺は旬介に殺されてしまうぞ」
 新月は、笑った。
「そうだ。新月は笑った顔が1番可愛いからな。ヤキモチ妬きの旬介の側にいてやってくれ」
 新月は、俯いた。
「大丈夫、死なせはしないよ。母上も旬介も。どうせ、兄上の嫁になればいいとか言われたんだろ。拗ねてるだけだよ。本当にそうなったら、泣き喚いて怒るくせにな」
 安易に想像出来てしまうのが、お互いおかしくて仕方ない。
「さあ、泣くのは本当に終わりにしなさい。まるで俺が泣かしてるみたいじゃないか」
 まあ、実際はそうなのだけれど。
「私、旬介のお嫁さんになります。だから、絶対助けてくださいね」
「ああ、約束するよ」
 すっと差し出した新月の小指を、蜃は優しく絡めた。

 

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