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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理 【ぼくらのガーベラ】4

   

 御影は犯人を示した。だが、言い逃れをしようとする犯人に、御影は心底落胆していた。

 芝原家は愕然としていた。御影よりも落胆の色は隠せないといった様子だった。

 輪都はあることに気づいた。その落胆の色は芝原家は家族同様の仲であるため、咎めきれずにくすぶっていた。だから第三者にゆだねるため依頼をしてきた。

 不自然な電話口での依頼主の奥さん、それがヒントになっていた。
 

 輪都は憤慨しながらも、芝原家を責めるような態度だった。

 しかし、輪都のその怒りの矛先は杜坂に向けられた。その真意は…

 

「杜坂巡査長、あなたが犯人だ」

 御影は盗難事件の犯人の名を示した。その声の質は本物だった。鋭くきつく、咎めるように、そしていつもの探偵御影の眼がそう輝いていた。

 温情のある田舎の人たちを、人の良さそうに近寄って警官という立場を振り翳した悪意に罰を与える。

「待て、警官であるわたしがそんなこと、ちがう…」

「いや、あんたしかいない」まさかこの期に及んで言い逃れをするとは思いもよらなかった。御影は心底、この杜坂という人物に落胆の色を隠せなかった。

 芝原家の者はあれだけ、にこにこと笑顔を振りまいていたというのに、探偵とはいえ若造のひと言を間に受けて、揺るぎないほどの筋の通った見事な推理に説得させられていた。

 いつの間にか家族は愕然となっていた。開いた口もふさがらず、肩を竦めながらどこかよそよそしさのあるしかめっ面に変わっていた。

 輪都はやっと気づいた。家族の誰もが自分たちでは杜坂巡査長を咎めることはできない。だから第三者にゆだねようと依頼してきたような反応だったことに。

 小柴が言っていた。依頼主の奥さんの電話口での不自然なほど情報量が少ない聴取に、小柴でも疑問を持っていながら御影に命じた依頼ではあるが、すでに多くを語らないのはある意味ヒントになっていたようなものだ。

「そのために、わかっていながら、あなたたちは…」

 輪都が声をもらすと、そのさきはあまりの人情味あふれる芝原家の面々の渋い顔に免じて言葉を抑えた。

 家族にはそんな言葉を向けることは叶わない。だが、輪都にとって咎めの矛先は警官にむけられる。

「杜坂さん、僕との会話にのってきたのは“あえて”ということですか?」

 輪都と仲良さそうに話すお巡りさんが、探偵がどのくらい調べて真相を明らかにしているのか探るために近寄ったためと思われてもしかたがないことだった。さすがに輪都でも気づくことだった。心はむしりとられるような怒りが沸々と水泡が沸きはじめていた。

「それは…」杜坂は言葉を濁すように、途切れ途切れにだが思いを語りはじめた。

 住人が都会の名探偵に依頼を頼んだものだから、びびっていたのは明白だった。しかし、いざ来たのはその部下だったからうまく立ち回れば欺けると思った、と話した。

「自分は警官だから、うまく立ち回れば篭絡できるのではないかとさえおもってしまった、すまない」

 御影と輪都は厳しい目を向けていた。
 
 

 警官が庭から現れて履いていた靴は革靴だった。警察から支給されただろう革靴。脱ぎ履きしやすい革靴だ。スリッポン式で楽なものだ。

 鑑識がきて調べるほどのものではなかったため、お巡りさんが検分したが、家族はそのときの巡査長の対応に不審感を抱いていたようだ。

 天秤にかけたらその親切心や日ごろの態度をみていると、盗難なんてことをするはずもない。杜坂巡査長が犯人のわけない。一番その疑いを晴らしたいと思ったのが、奥さんの瑞茄だった。

 瑞茄は頭を指先で抱え、ひどい目まいと頭痛を引き起こしているのかもしれない。まぶたを閉じて直視できずにいた。

 普段から家族同然の付き合いと、その恩を感じていたからだろう。だが結局は裏切られた。

 

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