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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理 【ぼくらのガーベラ】6

   

 御影は車から降りて聴き込みをはじめた。輪都は一人助手席にのこり宿泊できる場所を探していた。

 そのうち御影が視界に入ると一人で食い物を食べていた。

 いつの間に、と輪都は空腹を我慢していたというのに。自分一人駆けずりまわるのはわかるが、怒りは沸点に達してついには、荷物をまとめて社用車から出ていってしまった。

 せわしく探偵は聴き込みに足を運ばせていた。それを見送るように背をむける輪都は真っ暗闇の道を突き進んだ。

 

 御影は周辺に聴き込みを開始していた。

 一人助手席に残り、輪都は宿泊施設を探した。馴染みのノートパソコンで検索し、附近の宿の空きがあるか、値段は、食事は、とあれこれ考えながらその怒りは一ミリずつ蓄積されていた。

「はあー」

 何も食わないまま陽が沈み、辺りはぼんやりと灯りがついている家屋や数軒の提灯のついた呑み処がある。宿泊施設というのが見あたらない。

「外に出たんだ、ついでに探してくれてもいいものを。このままだと野宿、いや車中で夜を明かすことになるぞ」

 と輪都はぼそっといいながらパソコンの画面にはポイントマークがついた宿泊施設が点在していた。

「わりとあるもんだ。現在地がここだから、一番近いところで…」

 すでに視界に一件、淡い光を放って100メートル先にあった。この爆発の騒ぎで非難したいお客がいるかもしれない。ということは急遽空き部屋がある。

 でも輪都は両手が止まり、だらりと力が抜けていた。

 電話をかけて部屋をおさえる気さえなかった。空腹は活動を削ぐというのに、御影という男のエネルギー源がどこからくるのかわからなかった。

 窓の外を呆然と眺めていると視点が少し合わなくなっていた。飯を食うか、睡眠をとるか、どちらかにしないと輪都はこのまま燃え尽きるだろう。

 御影が視界にはいってきた。こちらにむかってきている。

「もどってきたか…」

 薄く開く唇から吐息がもれるように声がでた。

 すると御影はどこで購入したのかハンバーガーを口に頬張りながら歩きまわっていた。

「おいおいおい! どこで買ったんだあれは…、僕のことは放置して自分だけ、たらふく食ってんのかよ──」

 バグバグと食いながら携帯電話を見つめ、輪都のところにもどってくるかと思ったが、通りすがりの住民に話しかけていた。

 輪都の腹の底はガス欠だというのに怒りに燃えあがっていた。

「くそっ」荷物をまとめ社用車の扉を蹴飛ばすくらいの気持ちで開き、閉じた。

 バタンッと辺りに響く音が残響となって輪都の心情と比例していた。

 ここは静かな場所だ。でも御影探偵には助手の心情なんておかまいなしだった。

 御影の姿を見つめながら、輪都は振り返り背をむけて歩きはじめた。

「じゃあな探偵、あんたには付き合いきれない」

 なにもない真っ暗闇の中を突き進んだ。だが遠くのほうでは地上から発光している明かりが夜空にのびていた。

「また別の商店街があるんだな、ここよりはましだろう…」パソコンでマップ検索した。ふむふむと頷きながら駅の方角だとわかった。

「電車で帰るか…」

 

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