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異世界ファンタジー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編 第2話「亡国の今」

   

ルイスと過ごした最後の地、アヴァランでエリザはシアンと共に現実と向き合うことになる。

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編』
【毎週更新】

新章 第2話「亡国の今」

前作
(1)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編』全50話
(2)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』全40話

 

 

***

「エリザ、平気か」
「……大丈夫」

 シアンにはそう答えたけれど、正直に言うと、町に足を踏み入れた瞬間から手が震えた。思っていたよりもずっと兵の数が多かったからだ。それに、彼等が纏っているマントや腰にぶら下げている剣には紋章がない。彼等は、『国家の軍人』ではないのだろう。何者に雇われているのかもわからないような、ならず者――――。民に危険を及ぼす可能性のある者達が、町のどこを歩いていても見かけるほど存在しているのだ。その事実が恐ろしい。

「二年前と比べて、明らかに兵士の数が増えている……」
「おい、あそこの酒場見てみろ。男がいるだろ、一人」
「うん。それがどうしたの?」
「……上手く隠してるが、ありゃバール王国の兵士だな」
「えっ?」

 シアンの言葉が気になった私は、彼等には気づかれないように注意して、耳を澄ました。会話を盗み聞くと、確かにバール人特有の言葉の言い回しをしていた。

「何故、隠す必要があるの?」
「他国との衝突を避ける為かもな。アヴァランは亡国最大の港町――――……には慎重に動きたいはずだろ、バールもリュストも」
「この地を利用するつもりですか」
「ああ、多分な」
「……王族の一人でも生き残っていて、望んで他国に下っていればこうはならなかったでしょうね。少なくとも、民の安全は保障されたはずよ」

 私は拳を握り締めた。そんな私の視線に気づいたのか、楽しそうに酒を呑んでいたバール王国人の男がこちらを振り返った。その瞬間、シアンが私の手を掴む。

「行くぞ。一度どこかで落ち着こうぜ」
「――――待って」
「あ? 何だよ」
「…………」

 私はシアンの言葉に答えることなく手を振り払うと、歩き出した。今、聞こえたを無視したら、私は怒りでどうにかなってしまうだろう。シアンが止めるのも聞かずに、私は路地に足を踏み入れた。そして、正面を見据えて口を開いた。

「やめなさい!」

 私の声に、数人の男が振り返る。そして、手に持っている酒瓶や木棒を握り直して、大きく口を開いた。

「何だてめぇッ」
「餓鬼が出しゃばんじゃねぇよッ!」
「坊ちゃんよぉ、ぶっ殺されてぇのか? ああッ?」
「私の言葉が聞こえませんでしたか? その人から離れなさい」

 男達が取り囲んでいるのは、傷だらけになった青年だった。顔や服から覗く肌には、殴られた跡が幾つもあり、飛び散った血痕からして酷い暴行を受けていたことがわかる。

「その装い、リュスト帝国のものですね。酔っているわりには、人の体のどこを殴れば長時間動けなくなるのかわかっている……最低だ」

 私の怒りに滲む瞳を見て、一度息を呑んだ彼等だったが、すぐに先程の威勢を取り戻した。

「そうだよ、俺達はリュストの強靭な民だ」
「? 待て。こいつ女じゃないか……?」
「それはどうでもよいことです。何故こんなことをしたのですか!」
「こいつはアヴァラン生まれのアヴァラン育ち。つまり、亡国の民だ。国を持たない奴が国を持つ俺達に歯向かったんだ。制裁を受けて当然だろうがッ!」
「何ですって……? よくもそんなことをッ」
「黙ってろクソ餓鬼ッ!」
「おーい、どこのどいつがクソ餓鬼だって?」
 

 

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アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編 第1話第2話第3話

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