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現代ドラマ

鈴子 第三回 激変した生活

   2018年5月1日  

鈴子と健一の理解者だった義父の大木健之助は心筋梗塞で突然この世を去った。

「健一には後を継がせない。」

生前、健之助はそう言っていたが、周囲の動きは違っていた。「大木健之助事務所」は「大木健一事務所」と看板が掛けかえられ、健一は後を継がざるを得なくなってしまった。

サラリーマンから未知の政治家への転身、やはり、こういう場面では姑の雅代がいることは力強かった。慣れぬ健一を叱咤激励し、補欠選挙を勝ち抜き、健一は国会議員に当選した。

鈴子の生活も一変した。代議士の価値を上げるのも下げるのも妻次第。鈴子を励まし、鍛えてくれたのは故大木健之助が一番信頼していた山形事務所長だ。

彼は公平、公正、何事にも誠実で厳しい。鈴子は彼を信じ、彼の教えに従い、選挙区域を回るうち、「鈴子応援団」もできてきた。

実家の母は「お前も大変やね。」と言ってくれたが、鈴子は充実していた。

 

 
義父の緊急入院
 

平成23年(2011年)10月4日、火曜日の朝10時を過ぎた頃、義父の大木健之助は事務所で打ち合わせの最中、心筋梗塞で倒れ、救急車で帝都大学病院に運ばれた。

「お、親父が倒れたそうだ。これから俺も病院に行く。」

夫からの電話で知らされた鈴子も子供が学校から帰ってくるのを待って病院に駆けつけたが、義父はICUに入れられ、絶対安静、面会謝絶となっていた。

姑とは違い、義父は結婚に大賛成で、「鈴子さん、あなたはあなたのやり方で家庭を作りなさい。それが健一も喜ぶことだ。」といつも励ましてくれていた。つい先日も、「鈴子さん、健一を頼むよ。」と優しく声を掛けてくれた。

その義父が昏々として眠っている。

  お義父はん、早う元気になって下さい。

鈴子は涙がこぼれ落ちそうになったが、背中から聞こえてきたヒステリックな声がそんな気持ちを消し去ってしまった。

「鈴子さん、何してたのよ!」

姑の雅代は関係者はとっくに揃っているのに、嫁だけが何で一番遅いんだと怒っている。

「子供が学校から帰ってからでいいと、僕が言ったんだから・・」
「だからと言って、車で来れば、もっと早く来れたでしょう!」

鈴子はじっと唇を噛みしめていたが、夫は姑に何も言ってくれない。

「何を騒いでいるんですか。ここは病院ですよ!」

看護師に注意され、一旦は収まったものの、「まったく、いつまでお嬢さまのつもりなのかしら」と小言が続く。

「奥様、手術は無事に終わったから、ここらへんで。」

関係者の取りなしで、姑の小言は終わったものの、鈴子は不満だった。

  あんさん、なんで庇ってくれへんの?

鈴子は病院で居所が無くなってしまった。
 

 

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