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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理 【ぼくらのガーベラ】8

   

 御影は輪都がいると思われる場所の廃屋へと到着した。あまりの静けさに廃屋に近づくことができずにいた。

 距離を置いて廃屋を見守っていた。輪都を示すポイントマークはこの廃屋を指していた。

 しかし状況は動かなかった。そのまま白んだ朝をむかえてしまった。

 そのとき数名の若い男女が現れた。廃屋へと入っていったのを御影は見逃さなかった。

 ある一枚の紙が脳裏をかすめた。助手席に無造作に置かれていた紙だが、それは白いガーベラの花の絵が一輪、御影は急に何か関係があるか頭を捻っていた。

 そしてそこに姿を現したのは思いがけない人物だった…

 

 廃屋に潜入するとはいっても、静けさが邪魔をして御影の足は前に進まなかった。

 しかたなく御影は車の中で身をひそませ、この廃屋を一歩引いたところで監視することにした。

「ふー、旅館をチェックアウトしておいてよかった」

 スマートフォンの画面を見続けているが輪都の追跡ポイントマークの点滅はかわらずだった。廃屋を指していた。

 闇のように黒い世界に御影自身も染まりそうだったが、そのまま翌朝の白んだ空へと塗りなおすように朝を迎えた。

 そこへ数名の若い男女が現れた。そのまま何ごともない様子で廃屋内へと入っていった。

 地元の人間でもあるし、どこか慣れた感じの入り方だった。

 振り返りながら周辺を気にするような素振りは不自然さが映る。だからかもしれない。さもこれから仕事です、というふうに建物内に入っていった。

 本来は見られると困る何かがその廃屋内にはある、と御影は憶測を練った。

「輪都だけじゃない、何か秘密があるのか…」

“白い紙に白いガーベラの花の絵が一輪、その用紙が無数に爆発とともに舞い上がった”。

 助手席には、無造作に置かれていた紙のことを思い出した。

「白いガーベラって何か関係があるのか」

 御影は考え込んだが徹夜明けだ、脳がまともに働くわけない。そこでひらめいたのは代わりの頭脳マシーンだった。

 スマートフォンを取り出し、白いガーベラについて調べてみた。

 うーん、と唸りながら意味を噛み砕いて画面を指先で繰っていたときだ。

 スマートフォンに視界は狭まっていたというのに、脇道から現れた男性が一人歩いているのを気づいた。見覚えがあった。

「なに、杜坂巡査長…」

 御影は芝原家で推理を披露し犯人を指摘した。杜坂巡査長だった。

 だが、どういう結末で翌日の早朝、この場所に現れたのかは疑念がよぎる。温情から自由にした芝原家の人々からしてみたら不穏な行動と取られてもおかしくない。

「いくらなんでもこの廃屋にくるのは…、あの若者たちと接点があるのか。輪都と意気投合していたけど、何か因果めいたものが…、なんだいったい輪都をどうするつもりなんだ」

 幾通りかの推察を頭の中で考える御影だったが、廃屋の建物で何があるというのか、その答えがでない。輪都はこの廃屋内にいる。そして若者の男女が入っていき杜坂巡査長が制服ではなく私服で入っていった。

 手に握りしめたスマートフォンの画面には白いガーベラの意味が記されていた。

「そうか、杜坂巡査長の、いや杜坂という人物の生い立ちと…関係性があるのか」

 御影はぶんぶんと左右に振ってのぼせた頭を揺らしていた。

 それだけならいい、と御影は道筋を早送りしてエンディングを観ていた。ハッピーエンドにはなりづらい状況である。

 そこから先、なにか企てのようなものがあるのであれば危惧すべきこと。輪都が何かに利用されるために誘拐されたと考えるべきだ。

「まずい、なんとしても輪都を早急に奪い返さないと取り返しのつかないことになるかもしれない…」

 ブルルルッと手に握るスマートフォンにバイブレーション機能にしていたが、どうやら着信が鳴った。朝の7時前だった。

 相手は、「うわー、なんだいったい…、はい」

「御影くん、なにしてるの? 昨夜にはもどってくると思っていたのに、社用車がないから気になったのよ」

「早いですね、小柴さん…、でもすみません、まだ茨城で…」

「何しているのよ、いったい? あなたたちのことも気になって早く出社したの、社用車があれば深夜にでももどってきたと思って安堵できたのに…」

「それが輪都が誘拐されて、そのアジト附近で監視しているところで」

「…」

 電話口が静まり返った。こんなとき小柴はどういう顔でいるのか、気になった。

「小柴さん、聞いてます?」

「聞いているわよ、なんなのそれ…本当に? 冗談じゃなくて」

「冗談でこういうことは言いません」御影はきっぱりと言い返した。

「そうよね」少し間が空いた。「どんな連中なのよ」

「いや、若い男女の集団です。田舎ではよくあるいたずら小僧どもの暇つぶしかも、それに依頼を受けた芝原家の事件ですが解決はしました。したんですけどその犯人が、その近辺の駐在する巡査長だったんです」

「警官が、そう…田舎だと信頼とかで平然と家のことまでまかせるようなところあるわね」

「そうなんですか? でも、たしかにそこを突かれた犯行ですね。犯人もただの金銭目当ての犯行ですし」

「それで捕らえたの?」

「俺は刑事じゃないし、普段世話になっている巡査だからって依頼主がたぶんお咎めなしにしたんでしょうね。いまも輪都がいる廃屋に入っていきました」

「はぁ! どういうことそれ」

 御影はためらった。

「それが、何かあるみたいです」

「それは御影くんの直感ってことね」

「はい」

 小柴は押し黙った。何かを考えるような呼吸が電話口から聞こえた。めずらしい反応だと御影は思った。

「ちょっと話し変わるけどいいかしら…」

「なんですか?」

「都内で昨夜から今朝方にかけて妙なことが起きたの」

「妙なこと?」

「そう、妙なこと」小柴は反芻した。

 

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