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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理 【ぼくらのガーベラ】9

   

 輪都は何もできずに捕縛され椅子に座していた。朝になっても探偵は助けにこない。

 ほんの些細な苛立ちから御影の傍を離れてしまったことで、こんな事態になってしまったことを悔やんでいた。

 そこへ聞き覚えのある声に驚愕した。まさか杜坂が現れるとは輪都は驚いた。

 背面にいた輪都をさらった人数が6名いることもわかった。そして、輪都を誘拐した目的を杜坂は口にした。

 その目的を輪都は断わると、さらなる人物を引きずりだした。

 輪都はがっかりしていた。

 

 輪都は指先一本動かすことなく、後ろ手にされ、椅子に座したまま縛られていた。

 ふー、とたまにため息をついている。御影とちょっとした喧嘩によってこんな事態になってしまったことを悔やんでいた。

 朝になってもズボンの右ポケットにしまっているスマートフォンは微動だにしない。着信も、メールの振動すらない。

 あのまま御影と一緒に行動を共にすればこんな目に合わずにすんだ、とずっと胸の奥底では無念を吐露している。

 昨夜の諍いの場面が頭の中で何度もリピートされては気持ちが淀んでいく。

 輪都は誓いたいと思う。もし助かりもとの生活に戻ったときは、御影の言うことはぜったいに守ることにする。

「仕事のときだけは…」と最後だけ唇がかすかに動いた。

「やぁ」

 気さくに話しかけてきた人物に輪都は足の裏が浮くほど驚いた。

「あ、あなたは…、巡査長の杜坂さん。なぜこんなところに」

「おや、探偵助手というのは察しがわるいようで。それとも経験値が低いのかな」

 この軽薄な口調はなんだ、昨日芝原家で仲良く話していた人の良さそうな杜坂巡査長はどこへいってしまったんだ。

「あの、どういうこと?」輪都は頬が引き攣っていた。

 杜坂の背後には、輪都を誘拐した若者たちが不規則に並んで立っていたからだ。

 全部で6名いる。

 椅子に縛られている状態で何されるかわかったものではない。御影探偵がよけいな推理をして犯人を言い当ててしまったことへの腹いせだろうか。

 輪都は恐怖が足のつま先からせりあがって心臓の脈の速さが増していた。想像力は暗雲なことばかりがよぎってしまう。

「そんな顔するなよ、痛めつけようというわけじゃない。俺たちの仲間に入ってほしくて強行におよんだだけだ」

 肩にポンッと手を置いて、鼻先が当たるくらい顔を近づけるのはほとんど脅迫に近かった。

「どういうことですか、僕は東京の人間です。だからこの地にとどまるのはちょっと困るんですよ。来年は就活もあってIT企業目指しているので」

 大きく笑いはじめた杜坂だった。廃屋内は意外と響くようだ。その笑い声は大きく反響して削がれた輪都の心も恐怖心によって煽られていた。

「ちょうどよかった。ITを目指すパソコンに特化したオタクさんを募集中だったわけよ。俺の仲間にも何人もいるが、まだまだ必要なんだよ。だから、なっ、輪都くん」

 杜坂の変貌振りに悪意を感じとった。巡査長としての顔は表向き。制服を脱いだ杜坂は裏の顔が本性であると。確実に悪意に染まっている。

「妙なことをいいますね。僕に何をしろと?」

「ハッキングとかかな」

 杜坂は平然といくつもの犯罪と向き合う立場でいながらも、軽くその罪状を口にした。

「いや、それはダメですよ。警察側がそれを容認しちゃ…」輪都は後ろの若者たちの顔つきを窺った。

 どうやらそういうことをする連中と、誘拐じみたことをしては仲間に引き入れている強行班がいるようだ。

「僕なんか、なんの役にも立たないし、そういうのを目指しているわけではない」輪都はとうぜんこの話を断わった。

 一歩でも踏みこんだら抜け出せない世界に引き摺り込まれてしまった。やはり御影のいうとおりにしていれば。とまたしても後悔の念に苛まれていた。

 

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