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風刺 / ユーモア

俺たちのモクサン(1)

   2018年5月10日  

ヤンキー文化が廃れた現代でも、一部の生徒は自覚的に「不良」であり続けていた。

私立一流(いちる)学園高校の篠田 勇太たちもまた「不良」であり、そのアイコンである喫煙を行ってもいたが、校内外の治安維持の実情もあり、その不品行は見逃されていた。

ところが急に仲間たちが無期停学や退学を食らうといった事態が続発。しかも理由がどうも冤罪らしく……

 

「路上喫煙防止法が施行されて間もなく一年となり、『特別許可地区』も次々に姿を消しています。危険な行為がなくなり、また街が清潔になるということで喜ぶ声が多くありますが、一方で監視員とのトラブルも頻発し……」
 明るい声で原稿を読み上げるニュースキャスターの表情から、俺は反射的に目を逸らした。
 それは何の意識もしていない行為だったが、妻たちには奇異に思われてしまったらしかった。
「いや、物事は多面的なんだよ。例えばこういう話、誰もが得をしそうな事柄の裏でも、絶対に泣く人間はいるんだ……」
 大学で覚えた理屈っぽい物言いを使いながら、俺は遠い昔のことを思い出していた。

「おらっ、流高をなめてんじゃねえぞ! 数だけが頼りの暴走族なんぞに遅れを取るわけがねえだろうが!」
 尻尾を巻いて逃げていく「狼龍車堂(ロールシャドウ)」の連中に対して、杉下と山崎がタンカを切る。
 正直圧勝できたのは、「地の利」を生かした結果でしかないが、あいつらは強いと思わせれば、高校にちょっかいをかける奴らも少なくなる。
 折からの少子化と公立無償化の影響からか、新入生はめっきりと減り、「戦力」になりそうな連中はほとんどいないのだから、せいぜいハッタリを効かせて「平和」を維持するしかない。
「まったく、しょっぱい連中だよな。ロールの奴らは。俺たちのシマ内でパー券捌いて、弱い大学生の兄ちゃんをパシリに使うなんざ、風上にもおけねえや。年上には最低限、敬意ってもんを払わねえと」
 実家が風呂屋の江戸っ子、相川が苦々しく吐き捨てる。実際、最近の不良たちは妙に「知恵」をつけている。
 喧嘩だけじゃなく金を稼ぎ、しかも年上までグループに引き込もうとしている。
 もちろん、バイトやサークル活動といった「まっとう」な形ではないので、処理すべき面倒事も増えていく。
「ま、俺らは篠田がいるから楽勝だけどよ」
 と、ボコボコになった顔に笑みを浮かべて相川が俺を、つまり「流高の最終兵器」を持ち上げてみせた。
 俺は「よせよ」という代わりに重々しく頷いてみせた。もし立場が逆だったら、俺も必ず軽口を叩いていただろうからだ。
 一方で心苦しくもあった。「いざ」という時に全力を出せないことがほぼ確定していたからである。

 

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