幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

伝奇時代

生克五霊獣-改-44

   

 鬼が動き始めたー…。

 時代伝奇ストーリー!

 

 葛葉はそういうと、障子を固く閉ざした。
 久しぶりに顔を見せた葛葉の顔は、酷いものだった。肌は荒れて血色は悪く、目の下に隈がくっきりと現れていた。更に、ひどくやつれて見えた。
「大丈夫なのか? 寝てもおらんのではないか?」
 やはり返事はない。
「父上? 母上は?」
 心配した旬介が、恐る恐る晴明に問うた。
「さあ。だが、もう少しだと言っていたから大丈夫だろう」

 葛葉の言う通り、雨はそれから2日後に治まった。
 晴明自身も覚悟していたのは、里の被害だった。
 昨日までの大雨が嘘のように、空は青く晴れ渡っていた。
 旬介と藤治、獅郎を連れて、晴明は里の様子を見て回った。
 屋敷に戻る頃には日が沈んでいたが、不思議と里に被害はなかった。あの大雨に、と首を傾げながら帰宅する4人を葛葉が迎えた。
「おかえり。ご苦労であったな」
「葛葉、もういいのか? なら、休め。俺達の事はいいから」
 葛葉は、力なく笑った。
「少し休んだ。また何かしらあるといかん。今は蜃達が休んでおる故な」
 大雨の日、葛葉に部屋へ呼ばれなかった者達は全員居間に呼ばれた。そこには簡単な夕餉の用意がされていた。
「食べながら聞いてくれ。今回の大雨の事だ。晴明殿は勿論、旬介と新月以外は聞きなれん話になるのだが。以前、この里には鬼がいた。1人は晴明殿の母となった鬼、もう1人はその鬼と縁が深く、私と晴明殿が招いた鬼だ。鬼はこの里を狙っている。そして、恵慈家を潰そうとしておる。何故なら、鬼を封じた一族だからだ」
「鬼が悪いことしたからだろ?」
 と、旬介。
「そうだ。お前も覚えておろう。鬼のせいで、お前も私もあの薄暗くカビ臭い祠で生かされていた事を」
 旬介の顔が青く染まった。
「あ、あの……紗々丸と……あの時の……だから、あんなに怒って……」
 葛葉は、コクリと頷いた。
「お前、今更か」
 晴明が、呆れたように呟いた。
「だって、あの時の鬼は死んだと思ってたもん。だから違う鬼だって!」
「あの鬼だ。あの鬼が、お前達によって復活したのだ。そして、少しの間力を蓄え、里をその力で呑み込まんと大雨を降らせよった。その力が大きくなれば、里の被害は尋常ではなくなる。だから私は必死に抗うた。だが、1人ではどうしようもなくてな。それで蜃や青龍の力を持つ紗々丸や竜子に手伝って貰っておったのだ。その証拠に、里は無事であったであろう?」
「ああ」
 晴明が頷いた。
「完全に2人が蘇る前に、また封じねばならん」
「蜃に、生克五霊獣の法を教え込んでおる。準備が出来次第、奴等を封ずる。時は無い」
「…………」
 その場が重い空気で満たされた。皆の夕餉の手すら止まった。
 就寝前に、旬介は晴明の部屋を訪ねた。
「父上」
「どうした? 眠れんのか?」
「母上の話。俺、早くもっと強くならないと。いつ、修行に戻りますか?」
 晴明は、旬介の頭をくしゃっと撫でた。
「すまん。おしまいだ」
「え? でも俺、まだ」
「時間が無いのだ。いつも時間がある訳じゃない。お前との修行、お前は辛かっただろうが、俺は楽しかった」
 何故か、晴明が遠くに行ってしまう、もう会えなくなってしまうような、そんな気がした。松兵衛がいなくなった時と重なった。

 

-伝奇時代
-, , , ,

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品