幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理 【ぼくらのガーベラ】13

   

 東京ガーベラズシアター、という有力な情報を元に、捜査員たちはすぐに乗り込んだ。

 若者たちの隠れ家のように使われていた。

 そして、突入目前に数名の若者たちが扉を開いて出てきたところを捕獲した。

 個々に取り調べに応じる若者たちだが、その個性ぞろいの生い立ちに刑事たちがためらうように口を開く。

 メガバンクのハッキングを行った犯人は内堀ら四名が主犯格となり、ほかにも東京メンバーが捕縛されていた。

 犯人逮捕に胸を撫で下ろしたかと思えば、氷室は本来の首謀者がいるはずだ、それは…

 と訊ねた。

 

 東京ガーベラズシアターは廃虚と化した昭和初期の映画館。館内も管理人のような者はいなく、地下にスナックが数軒夜にだけ営業している。

 検挙された数名の人物は、北栗きたくり 蓮実はすみ、20歳、外見はおかっぱのショートヘアーの栗色をしている。小柄で気が強い。東京都出身で里親なし。

「驚いたな、里親いないのか」黒田刑事は対面しながら北栗を見つめたが、目をそらされた。どこかうんざりした態度がいやおうにも伝わってくる。

「資料によると、きみの生い立ちだが…」

「それがなにか文句でも」

 やはり強気な姿勢と口調はかわらない。

「都内にある施設の育ちだということでまちがいないね」

 黒田は少しためらうように言った。養護施設のようなところだが、その施設名はまだあきらかにしていない。むずかしい問題だが、素性をあきらかにしないとならないため、妥協はできない。

 都内のすべての施設を調べるだろう。

 黒田は土曜の夕刻から突如こんな難事件が障壁となって週末の休日をどう過ごそうかと思ったが、その金脈すら阻まれた状態に辟易していた。

「そうだけど」

 どうもつっけんどんな性格の北栗だった。

 別の取調室では伯田警部補が対面していた。相手は男だ。

毛物井けものい 充鷹みつたか、23歳か…」

 ちらっと一瞥する警部補だった。その目を凝視していた。

 痩せ型の長身。運動はできそうもない青白い顔。無口でなかなか調書がとれないが、「パソコン、があれば…」

 と意味深なことをいうからパソコンを目の前に置くと、わざわざパソコンの画面で会話に答える始末だ。

「まったく…、で、東京都出身、里親はなしか。都内の施設育ち、養護施設にいたってことか。パソコンはその施設でたまにくる大人の人に教わり、その後は独学で習得…、この習得というのはハッキングのことだな」

 毛物井は頷いた。ジェスチャーには答えることはできるようだ。

「なるほど」ため息を深く吐く伯田だった。

 さらに別の取調室では女性刑事がおなじように詰問していた。

 泉河いずみがわ こま江、21歳。外見は金髪のセミロング。160センチくらいの長身で細身のスタイルだが、口調も優しく見た目と違って世話焼き。ほかのメンバーのことを気にかけていた。それとちょっと口うるさい。

 東京都出身。里親なし。やはり施設育ち。パソコンは施設で習得。と、ここまで三人とも同じ出身で施設育ちだという共通がある。

 刑事らの胸中は同情はさることなら、だが職務にまっとうせざるを得なかった。

「ほんとうに、こんな子たちがねぇ」女性刑事は静かに驚きを露わにしていた。

 

-ミステリー
-, , ,

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品

自称天才数学者の推理記録 記録1 第6話

見習い探偵と呼ばないで! Season9-1

自称天才数学者の推理記録 記録5 第3話

見習い探偵と呼ばないで! Season11-7

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】25