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風刺 / ユーモア

ドリームメーカーズ(上)

   

阿久沢正一は生来のギャンブル好き。しかし結果と節度が伴わず、違法な裏パチンコにまで手を出して抜け出せなくなり、「打ち子」をやっていた。

破格の報酬さえもギャンブルに注ぎ込まざるを得ない自分に嫌気が差し、勝負中に聞くラジオにも八つ当たりしてしまう始末だった。

しかしそんな阿久沢をスカウトをしてきた男がいた。ギャンブルにどっぷりハマった人間でのみ構成される会社組織「ドリームメーカー」を作ったというのだ。

当然、博打はし放題でしかも半ば義務でもあり、大っぴらに裏博打の話をしても咎められることすらないという社風で、しかも給料はとてつもなく良いらしく……。

 

「はいっ、十番台、十番台さん確変入りました! おめでとうございます。はい、十二番さん単発、おめでとうです……」
 隙なく黒服を着込んだ若い男が、定型的な言葉を述べながら通路を行き来している
 首元につけられた小型マイクを経由して、スピーカーのBGMに祝福の声が混じっていくと、場内の声なき熱気がぐっと増していったのが分かった。
 しかし、皆顔なじみであるにも関わらず、待望のはずの大当たりに表向きの祝福すら述べる者はいない。
「ちっ、また奴の台かよ。ぶん殴って財布を漁ってやるか」
「んなことしたら出禁になっちまうぞ。ま、気持ちは分かるけどよ」
 ブツブツと不穏なことを口走る知り合いの声が、今確変を当てた阿久沢の胸に刺さる。
 しかし多勢に無勢、喧嘩なら買うぞと立ち上がることも、いもしない仲間を頼ることもできない。
 ただ背中を丸めて同じ動作でパチンコ台を操り、玉を出していくだけである。
「はいっ、十番さんまた単発。今日五度目の当たりおめでとうございます」
 スタッフの武田は慣れた手つきで俺の傍らに球の入ったケースを積み上げていく。
 それは後に「交換」される物品を並べると言うよりも、勝者がいることを「誇示」しているようでもある。
 武田が三列目まで「戦果」を示したところで、阿久沢の両隣に座る男たちがほぼ同じタイミングで立ち上がった。
「お帰りで?」
 笑みを作った武田に、男たちは首を横に振って、輪ゴムでまとめた万札を突き出した。
「もうひと勝負だ。機材導入を送らせておいて正解だったぜ」
「俺もやるよ。……いくら溜め込んでるか知らんが、全部たたき出してやるぞ」
 男たちの決意表明の声に、武田は満面の笑みを作り、早速部下を走らせていった。

 

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ドリームメーカーズ 第1話第2話

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