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伝奇時代

生克五霊獣-改-46

   2018年6月5日  

「待って、父上。生克五霊獣の法の欠点を知って、まだこの術に縋るというのですか? 他に方法は?」

生克五霊獣の法には、欠点がある。故に、使いたくない晴明と蜃ではあるが…

 

 確かに、その姿は恐ろしかった。皮膚は爛れ、口は裂け、目は釣り上がりまさに鬼女。
「お祖母様1人ですか?」
「おお、泰親殿もおるぞ。今は一緒ではないがな。それより、大きゅうなったなあ。晴明にそっくりじゃ」
 富子は蜃に擦り寄った。ぞっとするその姿を蜃は自分から引き離すと、代わりに持って来ていた饅頭を出した。
「近頃、人が喰われている噂を耳にしましてね。あまり考えたくはないが、もしやと思った次第です。弟が解放したのも、もしやお祖母様だったのではないかと」
 富子は饅頭を掴むと、無造作にかぶりついた。
「わらはの力は、封じられた際に根こそぎ吸い取られてしまったのじゃ。解放された直後は、この姿さえ維持することが難しくてなあ。人を喰らうことで力を戻してきた。じゃが、子では幾ら喰ろうても足しにしかならぬ。この先に、我らがふるさとがあるのじゃ。そこに戻って力を戻したいのだ。蜃よ、力を貸してくれぬか」
「俺が、ですか?」
「なあに、何も難しいことはない。明日は朔の日。我らの力が少しだけ増す。どうか、その時に我らのための道を開いておくれ」
「あ、ああ」
 富子は、満足そうに笑って見せた。
「ところで、何故封じられた状態で弟達に語りかける事が出来たのですか?」
 富子は笑った。
「随分不安定な術であったぞ。語り掛ける事は出来たし、封じられた鏡の周囲なら動き回る事も出来た。だが、それ以上の自由はなかった。まるで足枷と手枷を着けられたようじゃった。どんなに足掻こうが、どうやっても見えぬ枷は取れぬ。封じられた鏡を己で壊そうとするならば、わらわの身体が壊れそうじゃった」
 生克五霊獣の法とは、そのようなものなのかと蜃は頷きながら聞いていた。次は封印に更なる封をかけねばなるまいと。
「あまり、長居しては母上達に感づかれてるしまいます。今日はこれで」
「そうか、仕方がないの」
「明日夜、また来ます。道を開くために。もう1人の方も一緒に願います」
 富子は、ふと笑った。
「わかったぞ。泰親殿と待っておる。我らが復活した際は、葛葉を消して我らの身を潔白させ、主を自由にしてやるからな。何の不自由もない先を約束しようぞ」
 化け物めが、と心の底で悪態をついた。
「また、明日」
 

 

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