幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

伝奇時代

生克五霊獣-改-47

   2018年6月7日  

 
 葛葉は、子供達を全員居間に集めた。
「皆も知っておろうが、これからこの里を滅ぼさんとする鬼を退治しに行く。鬼を封ずる為の術を発動させるのは、今回蜃が役目。しかし、その術は思ったよりも不安定で脆い。鬼を封じたあと、更にそれを封ずる。その手伝いをお前等に頼みたいと思っておる」
 言うと葛葉は、傍らに置いていた風呂敷包を開いた。そこには、手の平に収まる程度の小さな鏡が5つあった。
「ここに、私がそれぞれ麒麟、青龍、朱雀、玄武、白虎の5つの力を込めた。これをこれからその力を担う各自に渡す。旬介は麒麟を。そして、青龍は紗々丸、朱雀は藤治、白虎は獅郎、玄武は甲蔵」
 葛葉から各自それぞれが、その鏡を受け取った。それを見届けてから、葛葉は続けた。
「鬼が封じられた鏡を中心に、その鏡を五芒星の位置に配置する。同時に今から教える呪文を唱え、自らの血をその鏡に付けて封印は完成となる。後、お前達が里を管理するようになった暁には、それぞれの土地にそれぞれの鏡を祀れば完成だ。その祠が壊されない限り、1つ目の封は解かれることはない」
「じゃあ、兄上がもし失敗したらどうするん?」
 鏡を天に掲げ、片目で覗き込みながら、旬介が問うた。
「その術だけで封じるしかない。まあ、その術も支柱となる今渡した鏡が壊れない限りは大丈夫だが、1つ壊される度に封印は酷く弱くはなる。ただ、今回鏡は1つしか用意出来んかった。それに、この術は酷く霊力を消耗する。この術にししろ、生克五霊獣の法にしろ使えるのは1度だけだと肝に命じてくれ。最悪、両方の術をそれぞれの鬼に使う事になるやもしれぬ」
 旬介達は、なんとなく聞いているしかなかった。緊張感を持っていたのは、新月だけかもしれない。それだけ、現実味のない話に聞こえた。何故なら、富子達鬼に支配られていた里の様子を、幼くして山で隠れ育った旬介には分からなかったし、後から来た者達では知る術すらなかったから。新月にしろ、鬼に支配される恐怖より、誰かがまた居なくなってしまう恐怖の方が強かった。
「鬼がどうとか……よくわかんないや」
 ぽつんと紗々丸が呟いた。それを咎めること無く、葛葉は返した。
「わかってからでは、何もかもが遅いのだ」

*****

 

 

-伝奇時代
-, , , ,

シリーズリンク