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青春 / 成長

メイク・アップ・レイディ 第三話 ミランダとサーシャ

   

「教育をしてください」
そう宣言したミランダだったが、授業になる前から難航。
ノーマはいったんサーシャに基礎教育係を任せる。
そこで培われるミランダとサーシャの友情だったが……
しかし、サーシャには誰にも言えない秘密があった。
『メイク・アップ・レイディ 第3話 ミランダとサーシャ』

※本作に登場する人物、文化、地域、団体名などはすべて架空のものです。

 

 
 一角をのぞき、明かりを落としたラングストン邸厨房に、こそこそと話をする人影が二つ。
「ミランダ様、そこはbではなくdです。dogです。bogではありません」
「そ、そう、か……dとbは区別がつきにくいべ」
「そうか、ではなく、そうだったの、がいいと思われます。それから訛りをお直しになってください」
「……わかり、ました」
 すり切れたショールを巻いたミランダ付きのメイド・サーシャと、レースのパジャマ姿のミランダが雁首揃えて、ノートを前に四苦八苦していた。
 明かり番のテオが起きているだけで、屋敷は寝静まり、時刻もとっぷり更けている。厨房に無理言って明かりを入れてもらっていた。
「Tom、ato……? これ、なんだべ?」
 ミランダがトマトの単語を示すと、サーシャは、ああと頷いた。
「トマト。ケチャップの元です。ご実家では食べられていませんでしたか?」
 言ってしまってから、この発言は禁句だったのではないだろうかとサーシャはひやひやしたが、ミランダが「ああ、赤なすのことだべな!」と新たに学んだ言葉に興味を持っていただけだったので胸をなで下ろした。
 ふーっとミランダが大きく息をつく。指先は扱いに慣れない万年筆のインクで真っ黒に染まっている。
「紅茶を入れましょう。少しお休みになったほうがよろしいかと」
「お願いします……」
 ミランダは疲れと眠さで目をしょぼしょぼさせて、「勉強って難しいんだなあ……」とぼそぼそ言っている。
 湯と茶葉を用意する〝不運〟のサーシャは、自分がミランダの実質的な勉強係になるとは考えていなかった数ヶ月を振りかえっていた。

 

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