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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理 【ぼくらのガーベラ】18

   

 立ちはだかった氷室名探偵ら刑事たち。

 動揺して身動きできずにいるのはガーベラのメンバーだった。目を丸くさせ動作の鈍くなったブリキの玩具のようにネジがゆるんでいる。

 そのときだった。伯田警部補が叫んだ。

「あいつとあいつ」一直線上に指を人物に向けた。

 黒田刑事が背後で待機していた千葉県警と手をあわせ若い旅行客の行く手を阻んだ。

 いつのまにか包囲されていたことに気づいたガーベラのメンバーら。

「加貝、北道、確保」

「草村、近磯、確保」

「駕籠、北瑞、確保」

 女たちの発狂した声がロビーに轟いた。

 騒然とした中、どんどんメンバーが捕縛されていく。

 一般人などは何ごとかわからず恐怖に脅えていた。

 そしてメンバーの近くに単独で旅行客に紛れていた数白も黒田が睨みつけて佇み、「数白だな」と名指しされ逮捕された。

 刑事らは指で指して名前までつげて羽交締めにしていた。

 屈強な加貝ももはや成すすべがなかった。

 オルフェンというサイトから始まったことだが、それから3年でここまで成長したガーベラという組織は、こうして幕を閉じたのだった。
 
 

“成田空港でそれぞれバラけて逃げる。おまえがいないのであれば、俺が逃げられなくなっただけだ。だから逃げられるようにしないと”。

 この意味がわからなかった輪都だった。何をいっているのだろうかと。それを聞いていたガーベラのメンバーも顔を見合わせ、どういう意味か捉えそこねているような印象をもったのだ。

 御影は逮捕劇に目を奪われていた。「逮捕は警察の仕事、すげー迫力」と関心していた。

 次々に東京組みも合流して隠れていた刑事たちに確保されていた。

「なぜ、おまえらは僕らの行く手を阻む…」数白は警察に取り押さえられながらも御影の姿を目撃して食いかかった。

「さぁ…もともとおまえらがやろうとしたことは、たんなるうぬぼれだ、自己顕示欲を満たそうとした暴挙にすぎない」

 御影は容赦なく痛烈な言葉を浴びせた。

「僕たちが決行しようとしたのと同時に、どうしてあんたらは現れたんだ?」

 御影は押し黙った。そして悟ったようにすました顔をあげた。

「それが運命なんだよ」空に指先を立てた。「神は人間のおこなうすべての善悪を高みから見おろしている。だから、おまえらのやろうとしている悪事を止めるために俺たちが先陣きって立ちはだかった。起因としたらそれだろうな」

「か、神だと…バカなことを」数白は吐き捨てた。

「そうだ、神がいるなら、どうして俺は孤児になった! 俺だけじゃない」駕籠は怒声を放った。「東京メンバーのやつら、北栗も、毛物井も、泉河も、内堀も…、ほかにだってまだ埋もれている連中がいるはずだ、なぜだ!」

 資料をペラペラと捲った。御影は咳払いをしてその疑問を投げつけた。

「だからおまえの捨てた両親たちにも天罰が下っていたよ」

 駕籠は目を丸くさせた。「なんだと、両親のことが、わかったのか」刑事に取り押さえられながら力いっぱい抵抗するも、急に全身の硬直がゆるくなった。

「ひどい目にあっているな、ありゃりゃ、これは悲惨だ。とても俺の口から言えることじゃない。おまえらがあとで刑事から聞くんだな。捕まってからじっくりと見せてもらえ」

「俺の両親は!」

 駕籠は吠えたが、それには御影は答えなかった。

「全員じゃないけど、新たな幸福な家庭を築いているのもいる。その当時は苦しかったのだろう。きみたちのことを一度だって忘れたわけではない。東京にいる内堀の両親を見つけて話した。だが、母親しか見つからなかった。父親は失踪したらしい。子供を授かったのが18歳の頃だった。若かったからいきなり家庭を築くなんていうのが恐くなったんじゃないか。きみたちの両親の気持ちも考えることができると、いいんだけど…」

 御影はせめてもの慰めのような言葉を告げた。

 

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