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風刺 / ユーモア

ドリームメーカーズ(下)

   

 と言うのもこの「流通」だが、基本的にカタギを対象にはしていない。
 理由は簡単で、社長から末端の社員まで、全員が非合法な博打に首まで浸かっている常習賭博者、つまりは日本の基準で言えば犯罪者なわけで、まず少しでも調査能力があるカタギの会社なら怖くて依頼できない。
 しかし、とかく口外されることを嫌う一方、人手がいる裏の賭博世界の住人たちは、「ドリームメーカー」に優先して仕事を頼むことになる。
 当たりをつけた筐体を「組」に横流ししたり、今まで誰が使っていたか分からないような「飛ばし」のパソコンを企業舎弟に売りつけたりする形になるので、通常の企業がルートを開拓できない分ニーズは独占できるし、口止め料込みで報酬も高い。
 また、社員たちがとてつもなく博打の知識が豊富という利点もある。
 もちろん、直接手を下すのは「本業」の連中で、こちらに累が及ばないシステムはできている。
 好きこそものの上手なれとは良く言ったもので、阿久沢たちは驚異的なスピードで案件をこなしていった。仕事中は無駄口はきかない、同僚をいびったり自慢話をする時間も省くので、必要以上にギスギスすることもなく、実に充実した意識で仕事に取り組める。
 そして、毎月二十五日にはお楽しみの瞬間が待っている。
「今日も良く頑張ってくれたな、諸君。さあ、給料を支払っていくぞ。今月はかなり色をつけてある。楽しみにくるように。高津、木下、清水……」
 全社員が集合したオフィス内で、早田が声を張り上げると、一癖ありそうな社員たちは口々に応じて立ち上がり、早田の方へと向かう。
 傍らに控える秘書が、分厚い封筒を手渡し、社長がねぎらいの言葉をかけるというのが、この企業の給料日の光景だった。
 無論金の出処はまったく不明だが、「その程度」のことを一々気にする者はいない。
「阿久沢。営業課長として今月も良く頑張ってくれた。遠慮なく受け取って貰おう」
 早田の秘書が差し出してきた封筒は、他の者の二倍以上も分厚かった。
 もっとも役職がついている上に人の二倍も働いたのだから当然と言える。
 阿久沢は過度に卑屈にならず、一方で丁重さを忘れずに金を受け取ると、もう一人の秘書が差し出してきた、「二泊三日クルーズ」のチケットを貰った。
 オフィスにいるほとんどの連中も、同じチケットを持っていた。
「全員に行き渡ったようだな。貰っていない奴、不参加の者は? うん、今回は全員参加か。大変結構だ! それでは金を取りに行くぞ!」
 早田のハッパに全社員が応じ、車に分乗してカーフェリーに入り込み、彼らは海の旅に出ることになった。
 もっとも、どこか海外の観光地に寄港するわけでも、秘境を見て回るわけでもない。社員たちには別の目標があった。

 

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ドリームメーカーズ 第1話第2話

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