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風刺 / ユーモア

ドリームメーカーズ(下)

   

「さて、寝るには少し早いか……」
 カジノの雰囲気に合わせるべくあつらえた腕時計の針を見た阿久沢は、自室に戻りベッドに眠る代わりにボイスチャットを始めることにした。
 相手は、高校の時に世話になった先輩だ。
「お久しぶりですね、先輩。半年ぐらいぶりになりますか」
「おおっ、誰かと思ったら阿久沢じゃねえか。随分調子の良さそうな声だな」
 上機嫌らしい先輩に向かって、阿久沢もまた気分良く言葉を継いだ。
「ふふっ、会社を替えたら色々と調子が出てきましてね。今では基本給は五十万円以上、営業課長としてボーナスも入り、しかも福利厚生は最強って、夢のような職場ですよ。『ドリームメーカー』と言うんですがね」
「何だそりゃ。俺も入りたいな。何だったら、お前の部下でもいいぐらいだ。でもよ、大丈夫なのか? そんなにいい職場で」
「それが心配皆無なんですよ。皆とてつもない博打好きですから。今だって、カジノ船の中なんですから。バリバリ仕事ができて、しかも博打のことを隠さなくてもいいなんて、夢にもほどがあるってやつです。何なら、先輩のことも社長に推薦しておきますよ。俺の博打の師匠じゃないですか。また一緒にガッチリ稼ぎましょう……」
 阿久沢の熱意ある言葉は延々と続いた。
 それは本心からのものであったが、半ばはこうやって「行い」を良くすることで、勝ちが回ってくることを熟知していたからでもあった。
 まだ航海日程は十分に残っている。基本給という「原資」を残したままで引き下がることなど、まったく阿久沢の選択肢にはなかったのである。

 

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ドリームメーカーズ 第1話第2話

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