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風刺 / ユーモア

ドリームメーカーズ(下)

   

「早田君はうまくやっているようだね。この『プロジェクト』を完全な成功に導いている」
 日本国内的には合法でないレベルの博打に一喜一憂するギャンブラーたちを、まるで愉快な動物を眺めるように、モニター越しから無機質な視線を送る者たちがいた。
 彼らは早田が用意した、いや、早田が「用意してもらった」船よりもはるかに巨大で豪華な客船に乗り込み、優雅な船旅を満喫しているところである。
「単純ながら、うまい解答というところでしょう。実際経営者にとっての大問題、ジレンマを彼は解決しました」
 主人よりもずっと若く、と言っても優に五十代を過ぎている執事は、モニターを眺める老人の傍らで、しなやかな立ち姿を保ち、表情を一切変えない。
「そうじゃな。経営者は一定以上の金を払わねばならんし、より良い人材を求めるなら、最低線よりもずっと多くの給金を出さねばなるまい。しかし額面通り銭を支払っては企業に利益が残らない。だから普通は折り合いをつけるが、吸い上げることで問題を解決するとはの」
「ギャンブルというのもうまい手でしたね。運が基準の博打なら、理由のない負けがございます。つまり能力や素行の要因をこじつけなくとも全ては済む、という話で」
 実験の一環として早田に作らせたドリームメーカーと提携する博打場は、すべて早田の息がかかっている。
 つまり吸い上げた金は早田の方に流れるので、どれだけ給料を払っても早田は損をしないというわけだ。
 しかし、モニター越しにも分かるぐらい歓喜全開で、傍から見れば冗談にしか見えないレベルの当たりを重ねる早田に、執事は雰囲気だけで苦笑してみせた。
「とは言え、遠隔操作で出玉を完全に調整して従業員への報酬を望み通りの『給料』に調整したり、自分が打ち子になるのはやり過ぎのような気がしますが」
「ふふ、奴も興奮しているのじゃろう。貸し付けた金の一切を取りはぐれることなく、従業員は自分ではそれとさえ気付かずに薄給激務に耐え続けてくれる。しかも高待遇で外面も最高。まさにドリームメーカーじゃ」
「今回のシステムで引っかかるのは博打好きだけでしょうが、……しかし、このまま行くと日本中、いや世界中の国々の人が皆高給取りになるかも知れませんな。貯金があるかは分かりかねますが」
 主人は執事の軽口に満足そうに頷くと、わざとらしいほどに当たりを連発する早田たちの姿に、再び集中していった。
 
 

≪おわり≫

 

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ドリームメーカーズ 第1話第2話

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