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現代ドラマ

鈴子 第九回 明暗

   

 
やっぱりパパだ
 

「ああ、疲れた・・」

その日、支援者回りを終えて帰宅した健一はそのままソファーに倒れ込んだ。

「ほらほら、ちゃんと着替えんと。子供たちが見てますよ。」
「はいはい、分りました。」

鈴子は健一から上着を受け取ると、それをハンガーに吊るしていた。

「朝から夕方まで、会議は慣れているけれど、挨拶はまた違うね。」
「そうどすね。気疲れと違いますか?」

鈴子も何人かの支援者を回っていたので、夫の気持ちはよく分かる。

「気疲れ?そうかも知れないな。」
「はい、どうぞ。」

ワイシャツを脱いだ健一は、鈴子から渡された冷たいおしぼりで顔を拭っていた。

「ふぅー・・気持ちいい・・」
「肩でも揉みまひょうか?」
「え、そうかい?」
「お安い御用どす。」

議会のある時はやむを得ず別居生活だが、こういう時は一緒に過ごせる。鈴子には嬉しい時間だ。

「硬い・・」
「うん、パンパンに凝ってるだろう?ああ、いい気持ちだ・・」

力の弱い鈴子が揉んでも簡単にほぐれる筈はない。でも、そう言ってもらえれば、もっと一生懸命に揉んであげたいという気持ちになる。

「ちょいと力を入れますよ・・」
「ああ・・お、う、痛ったたた・・効くなあ、ママのは・・」

そんな両親の様子を見て、「僕にもお願い」、「お兄ちゃん、ずるい、私よ。」と子供たちも集まってきた。

「よしよし、順番だ。パパの次は・・やっぱりパパだ。」
「ずるい!」
「パパは疲れているんだから、許してあげなさい。」
「はあーい。」

主の戻ってきた家庭は本当に明るい。

  あんさん、やっぱり、一緒に暮らしたい・・

鈴子はその思いをぐっと堪えていた。

 

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  1. 丸山 利子 より:

    推理小説の様な話しの展開で最後まで一気に読みたい内容です。 また次回が楽しみです。

     

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