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現代ドラマ

鈴子 第九回 明暗

   

 
「な、何だよ、それは!」

俊夫はそのゲラを引ったくろうとしたが、隣に座った男にグッと腕を掴まれてしまった。

「まあまあ、吉岡さん。」
「は、離してくれよ・・」
「慌てんなよ。俺たちはあんたを助けようとしているんだぞ。」
「助ける?」
「そうだ、助けるんだよ。雑誌社が書いた記事を見つけ、『これは吉岡さんに相談しなくちゃいけない。』って、今、編集長に待ってもらっているんだ。」
「ど、どこの雑誌社ですか?」
「ははは、それは言えないよ。」

男はタバコに火をつけていた。

「印刷を止めるには金がかかるんだ。」
「えっ・・」
「俺が編集長に掛け合うけど、まあ、300万ってとこかな。」
「300万・・」

もう、自分の小遣いで遣り繰りできる額ではない。妻に知られたら・・いや、それどころではない。対応を誤れば、会社に多大な迷惑を掛けてしまう。俊夫は血の気がすーと引いて行くのがよく分った。

「会社を守るためなら、安いんじゃないか、吉岡さん。」

そして、男はタバコをふぅーと吹きかけてきた。

「まあ、この場で決めろとは言わないが、いい返事を期待してるよ。」

車はそこで停まり、俊夫は解放されたが、会社までどのように戻ったのか覚えていなかった。
 
 

(続く)

 

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レビュー

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  1. 丸山 利子 より:

    推理小説の様な話しの展開で最後まで一気に読みたい内容です。 また次回が楽しみです。

     

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