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伝奇時代

生克五霊獣-改-48

   2018年6月12日  

恐れていた通り、生克五霊獣の法は沢山の犠牲を出した。全てを守るために晴明は己を犠牲にする道を選ぶ。

 

「詳しくはわからんが、どうやらそういう約束で身体を犠牲にこの世に戻ってきたそうだ」
「約束? 誰と?」
「さあ? 三途の川原におった、不気味な老婆らしいが。もう、よいではないか」
 富子が話を終わらそうとしたので、蜃もそれにしたがった。
「それで、お祖母様。俺は何をすればいい?」
「泰親殿が地獄から戻ったら、2人でこの里を抜ける道の先導をして欲しいのじゃ」
「先導? それで、お祖母様はこの里を抜ける事が出来るので?」
「ああ。この里の周りには、忌々しい葛葉の結界が張り巡らさてれおる。抜けるには、そこに穴を開ける必要があるのじゃ」
「俺は、何も出来ませんが……」
 富子は案ずるなと頷いた。
「お前は居るだけで力がある。葛葉の結界をお前が通ることで、そこに僅かながら穴が空く。僅かな時間ではあるが、今夜ならば我らが通るには充分じゃ」
「そうですか」
 蜃が頷くと、富子は満足そうに笑ってみせた。
 そうして、暫くの間何処から手に入れたかわからない酒を蜃に振舞った。
 その様子を、晴明は静かに見ていた。自分に、鬼となれど母を果たして斬る事ができるのか。考えれば、僅かながら手が震えた。
 丑三つ時頃、泰親が現れた。
「お待たせ致しました」
 泰親は言うと、あった酒をひと口ふた口と、口に含んだ。
「疲れましたねえ。相変わらず、面倒なババアでしたよ」
「泰親殿。母上から聞きましたが、地獄で何をしておるのですか?」
 泰親は、蜃を無機質な顔で見た。その顔は不気味な程に生気が感じられない。
「ババアは、かつて三途の川で亡者共から物乞いをしていた老女です。私が地獄に引き摺り込まれた時のこと、三途の川の辺でそのババアに会いました。ババアは、私を見て大いに笑いましたね。生身の人間が、亡者に連れてこられておる、なんとも愉快だと。ただ、そんな私にババアは条件を出したのです。私の人としての肉体を欲しいと。ただ、その肉体を維持するには定期的に私自身がその肉体を管理しに戻らねばならない。ババアはそれを条件に私をこの世に戻してくれたのです」
「そのババアは、何故に人の皮を被りたかったのだ?」
「ババアは、人となり、人の世に紛れ、人を時々攫っては弄んで喰らう。そういう鬼じゃ。亡者を弄ぶのは飽きたのだそうだ。本来は、六文銭を出さぬ亡者を飽きるまで弄んでは喰ろうておったそうだ。ババアに捕まった亡者は哀れ。六文銭を取られて、あの世に行けぬか、六文銭を握りしめたまま、弄ばれて喰われるか」
「胸糞悪い」
 蜃の反応に、泰親は笑った。
「それが、あの世と言うものよ」
 半刻もせぬうちに、2人が立ち上がったので、蜃も続いて立ち上がった。
「さて、邪魔の入らぬうちに行きましょう」
 富子達が歩み出したので、その後を蜃が、その後を気付かれぬよう晴明が続いた。
 

 

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