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伝奇時代

生克五霊獣-改-48

   2018年6月12日  

 どのくらい歩いたかは、わからぬ。
 ただ、殆ど視界もなく、足場の悪い、道とも言えぬ場所をひたすらに歩いた。
「さて、まもなく結界です」
 と、泰親が蜃に教えた時だった。
 ガサッと、薮が揺れた。
「いかん!」
 何かに気付いた富子の顔が、険しく歪んだ。
「おのれ! 何処まで邪魔をするかっ!!」
 髪を振り乱しながら、富子が飛びかかった人影は、紛れもなく葛葉だった。
「蜃!」
 苦し紛れに、息子の名を呼ぶ葛葉の声がした時だった。
「いかん!」
 言うが早いか、富子の背中に真っ直ぐに刀が突き刺さった。
 ギロリと振り返った先にあったのは、蜃の顔だった。
「お……ま……え……」
 富子の怒りの目が、ぐるぐると周囲に向けられる。
 周囲の空気が変わり、七色の雷光と竜巻のような風が周囲を包んだ。

 生克五霊獣の法が発動していた。

「おのれ! おのれ! おのれ! おのれ! おのれえええええ!!!!」

 富子の断末魔のような怒声が響いた。
 雷光と突風は、時折水や火を纏いながら周囲を巻き込みながらも富子を包んだ。
 これで、終わると思った時だった。

「ああああああああああ!!!」

 と、今度は旬介達の声がした。生克五霊獣の法が終わった後の、更なる封印の為にスタンバイしていたのだった。
 葛葉も蜃も晴明も、お蝶を思い出し、真っ青な顔で子供達の方を見た。
 信じられない光景が広がっていた。
「あつい! あつい! あつい! あつい!」
「いたい! いたい! いたい! いたい!」
 それぞれが違う事を訴えるようにのたうち回っていた。よく見れば、子供達の身体の一部が砂のようになりながら、煙を上げながら消え始めていた。
「いかん!」
 晴明が叫んだ。
「ぎゃああああああああー!!」
 それとは別に、富子の顔も酷く歪みながら消えようとしていた。
「龍よ! 頼む、恵慈家の龍よ!! 子供達を助けておくれ!」
 叫ぶと晴明は脇差を抜き、それを自らの心臓に突き立てた。
「代わりに……俺の生命をやる……だから……頼むから……子供達を連れていかんで……くれ……」
 晴明の真っ赤な血が吹き出し、その場に倒れ込むのと同時に、子供達の身体から崩壊が止まった。
 暫く、葛葉も蜃も唖然としながらそれを見ている事しか出来なかった。
  ようやく脳が動き出したのは、逃げる泰親を見つけた時。
 葛葉は、ありったけの力をもって、術の塊を泰親にぶつけた。
「お前は、私が逃がさん」
「ヒイッ!」
 と、泰親の声にならない悲鳴が上がった。
「子供達の代わりに、私がありったけの力を込めて、お前を封ずる」

*****

 

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