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伝奇時代

生克五霊獣-改-48

   2018年6月12日  

 
 旬介と新月はそれぞれ片目を、紗々丸と竜子はそれぞれ片足、藤治と華炎はそれぞれ片腕、そして獅郎と薫風は互いに音を、そして甲蔵は色を失っていた。だが、その中で最も悲惨だったのが獅郎の妹、夢路であった。夢路の身体からは皮が失われ、強いて例えるなら筋肉剥き出しの人体模型のような姿になっていた。哀れなその姿に、葛葉は丁寧に布を巻き、綺麗な着物を着せてやった。
 不思議な事に、夢路も含め元々それがそこに存在していなかったかのように、傷口にすらなってはいなかった。無論、痛みなどもない。
「夢路、具合はどうじゃ?」
 葛葉の計らいで、夢路は1人離にいた。
「甲蔵が恋しがっておるぞ」
「こんな姿、誰にも見せたくない」
 夢路は瞼のない目から、はらはらと涙を流した。
「葛葉様、私を殺してください。こんな姿で、これ以上生きていたくないのです。誰にも会いたくない、会えない……」
 血の繋がる獅郎ですら、会うことを固く拒んでいた。
 葛葉は何も言えず、ただ夢路の側に居ることしか出来なかった。

「夢路は?」
 離から葛葉が戻ると、決まって1番に獅郎は様子を聞いた。夢路の皮が消える時、皆がそれぞれ自分の事に精一杯で、誰も他の人間の事など見ていなかった。全てが片付いた後も、自害した晴明にその目は向けられていた。幸か不幸か……夢路の哀れな姿を見た者は、葛葉と蜃だけだった。 
「大丈夫だ」
 としか、葛葉は言えなかった。
「いつも、それですね。何がどう大丈夫なのですか?」
 葛葉は、言葉を詰まらせた。が、元々賢い獅郎は、そこで更に責め立てたい気持ちを飲み込んだ。
「夢路がいいと言うまで、俺は待ちます。そう伝えてください」
「ああ」
「ところで、晴明様の葬儀の準備をしないと」
 晴明の遺体は、一旦晴明の部屋に寝かされていた。綺麗に整えられ、まるで昏睡しているかのようだった。
「そう……そうじゃな。まだ信じられんのだ……」
 と、消え入りそうな声で葛葉は呟く。
「旬介と新月も、晴明様の遺体の前で泣き崩れたまま動こうとしません。蜃様は平気そうにしていますが、相当に強がってるだけですね。それに、甲蔵はまだ小さい。色を失ったショックと晴明様がいなくなったショックで、塞ぎ込んでいます。俺がついててやらないと……夢路を呼ぶけど、それも出来ないから、せめて……俺が」
「すまんな」
 獅郎も切なそうな表情で俯いた。
 
 

≪つづく≫

 

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