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異世界ファンタジー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編 第4話「別れた場所」

   

教会に飾られていた絵を描いた作者は、エリザのよく知る人物だった。

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~レッドラット編』
【毎週更新】

新章 第4話「別れた場所」

前作
(1)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編』全50話
(2)『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』全40話

 

 

***

「思ったよりも空気薄いな……」
「埃も凄いね」

 少し咳き込みながら、私は口元を布で覆った。

「出口に近づくと梯子があるはずよ。そこまでの辛抱ですから」
「おー……」

 暗い。明かりがあっても、照らせる範囲には限度がある。ここでは目よりも耳と壁をなぞる指先の感覚の方が信用出来るだろう。
 後ろを歩くシアンは、相変わらず無言で私の後について来ていた。

「ね、シアン」
「おい、あんま喋んなよ。埃吸い込むぞ」
「……ごめんなさい」

 シアンに無理をさせている。彼はきっとこういう場所が苦手なはずなのに――――。

「……え……?」

 私は震える手でそっと額に触れた。思った通り、冷汗が浮いている。

「何で……こんな時に……」

 意識にもやがかかる。何かがせり上がって来ているのに、それが何かわからない。もどかしく、苦しいあの感覚が私の意識を支配した。だが、それもまた一瞬で終わってしまう。
 荒い呼吸を繰り返す私の背中に、シアンの手が触れた。

「急に止まんなよ。何かいたか? ねずみ?」

 シアンの声が、私の意識を呼び戻した。

「……いいえ。もう着いたわ」

 私は目の前に現れた梯子を明かりで照らして、シアンに指し示した。

 ――――懐かしい。逃げる為に必死で掴んだ細い梯子も、こうしてよく見たら頑丈に出来ている。実際に触れてみると、当時の記憶が鮮明に蘇ってきた。

「これかー。結構古い割にしっかりしてんな。おい、お前から先に登れよ」
「うん」

 私はそう答えると、手の汗を拭ってから梯子に手をかけた。ぐっと力を込めて、踏み外さないように気をつけながら登っていくと、やがて天井に行き当たった。錆びついたマンホールのふたに触れて、私は下にいるシアンに声をかける。

「シアン! 出口です!」
「どうだ? 蓋、動かせそうか?」
「だ、大丈夫だよっ……」

 片手で横にずらすようにしながら持ち上げようとしたのだが、上手くいかない。すると、焦り出した私の顔の横を勢いよく棒状のものが過ぎ去った。

「シアン……!?」
「動くな」

 彼の言葉通り、ぴたりと動きを止める。そして、シアンは長刀の柄の部分で、マンホールの蓋を勢いよく一突きした。その瞬間、蓋が宙へ舞い上がる。蓋の上に置いてあったのだろう木箱も共に宙を舞っていた。埃が夜風に溶けていく中、私は小さく悲鳴を上げてぎゅっと目を瞑った。瞬間、ガラガラッと音を立てて、舞い上がった蓋や木箱が地面に落下した。その様子を呆然と見ていた私をシアンが呆れたように急かす。

「何してんだ! 早く上に上がれ!」
「は、はい」

 恐る恐る地上に出ると、私は彼に手を貸した。

「どうぞ」
「いや、いらねぇから」
「じゃあ、荷物を下さい」
「……なら、これ持っててくれ」
 

 

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