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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理 【ぼくらのガーベラ】20 END

   

 杜坂の計略は数年を要していた。それがなぜ芝原家に突如訪れ、現れた輪都に目をつけたのか、その疑問だけは御影は最後まで納得できなかった。

 衝動で気が合ったから、というが不自然すぎる。

 それに関して氷室が意見した。「人間味、正直な気持ちで意気投合しただけ」

 杜坂はふっと笑った。

 御影は多くの仲間を失い犯罪に手をかけさせてしまったことを責め立てた。

 杜坂は言い訳するように持論を展開した。

 しかし氷室がそっけなく一蹴した。
 
 

 そして御影たちが最後に得たものとは。
 

 

探偵の眼・御影解宗の推理 【ぼくらのガーベラ】完結

 

「なんだと…」杜坂は度肝を抜かれた。

「ああ、あんたのしくじりは、あんたが調子に乗りすぎてしまったところだ。俺や輪都まで引き入れようとした時点でドツボに嵌っていた。芝原家の人たちが許してくれたのなら、そのまま静かにしていればいいものを、なぜ輪都を誘拐したんだ?」御影は杜坂を攻めた。

「そうだったな、それはたしかに行き過ぎた行動だった。必要なかった衝動かもしれない」杜坂は述べた。

 氷室がほくそ笑んだ。「ちがうな。人間味、がでたんじゃないか。こいつは仲間に引き入れたい、正直な気持ちで意気投合してしまっただけだろうよ」

「ふっ」杜坂は吹きだした。「そうかもな、そうかもしれない。これまで仲間にしてきた連中もそういう感情めいたところは素直な自分でいたから俺についてきてくれたんだろう。これは自業自得の敗北だ」

「彼らは全員検挙された」御影は言った。「あんたのせいで、しなくてもいい犯罪グループの一員として捕まったんだぞ。その数50名ほど…」

 杜坂は口もとがゆるんでいるように微笑んでいたが、わかっている、それはしかたがないこと、と言っているような顔だった。

「彼らも、あんたを騙していた」

 顔をあげた杜坂だった。「なんだと?」目を細め疑わしそうに御影を見ていた。

「彼らも、杜坂さんにはいえないことがあったようだ。それを隠してガーベラの花言葉の意味をそのまま世間にぶつけよう、言葉を投げようとしていた」

「そういうことか…、あいつらは親の愛をしらない者ばかりだ。同世代の友人、兄貴のように慕ってくれる俺に社会の厳しさを根底から覆そうとしたかったのだろう。だから何かを変えたくてガーベラの旗の下に集まってきた」

「そうだな、未熟な子供はそういうことに精をだす」氷室はそっけなく杜坂の抗弁を一蹴した。

「そうですね…」杜坂の目から涙が頬を伝った。

 御影はこんな酷い人でも、まだ人の心がのこっていたことにどこか安堵した。

「彼らの起こした反乱はけして無駄に非ず。きっと政府や正義の言葉の下で埋もれ、隠れてしまっている悲劇を幸福な喜劇に変えてくれる制度が訪れることだと信じてる」

 杜坂は最後の言葉を言った。本当はその言葉は彼らたちだけでどうにかしないとならないと割り切っていた感情の隔たりでもあった。

「俺たちができることはただ罪人にならないために未然に防ぐこと。逮捕するのは警察だ。だったら俺たち探偵はしっかりと彼らの心にとどくよう説明してあげればいい。何もしらないことでどれだけ不安を煽っているか、それは彼らが一番畏れていることだ。このさきも…きっと」

 杜坂は項垂れ崩れるように膝をついていた。

 

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