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風刺 / ユーモア

うっぷんばらし(上)

   

下っ端ヤクザの木下 杉太は仕事に不満を持っていた。割に合わないシノギばかり押し付け、盃もくれない兄貴分や、小間使いとしてしか見ていない親分。黙々と酒を呑んでも気は晴れなかった。
そんな時、同級生だった山田から「うっぷんばらしの会」という催しを紹介された。その名の通り、各人がムカつく話を持ち寄り、面白おかしく語ることで不満を共有しようと言うのである。
試しに参加してみた木下は、日頃の不満もあり、結局は物凄い暴露をし続け、大いに盛り上がったのだが……。

 

「おお、痛え、痛えな……」
 午後九時、駅前と言っても人気がまばらになった一画で、男が白い息とともにぼやきを漏らした。
 かなりいいものを選んでいたつもりだったが、今や服はボロボロで、金のネックレスや指輪などもはぎ取られてしまった。
 しかも、顔もボコボコになってしまっている。
 彼、木下 杉太のその姿を見て、尊敬の念を覚える者はいないだろう。
 実際木下は大柄でもなく腕っ節も弱く、そのためか彼がいる「業界」では重要な仕事を任されたことはない。
 手ごわい連中への取り立てや、油断のならない敵組織への嫌がらせ等々、金にはならないが割にも合わない任務だけを押し付けられていたのである。
 難しい仕事なので当然、失敗のリスクも高いが、しくじろうものなら今日のように手足から顔面までまんべんなくボコボコにされ、おまけにドサクサで金目の物を奪われたりもする。
 盃を貰って正規採用となればかなりマシだが、「兄貴」や「オヤジ」たちは一向にその気配は見せない。
 ここ一年、ボロマンションの一室に寿司詰めにされ、使い捨て未満の待遇は変わらないのである。
「くそっ、あいつら思いっきり殴りやがってよ……」
 木下は自分の靴に仕込んでいた一万円をポケットの中に詰め直した。
 高校の時、ワルに絡まれる弱い同級生がやっていたのと同じ手に助けられる自分が心底情けなかったが、だからといってこのままシラフで帰って、周囲からの視線に耐えられるほど木下は強くもなかった。
 故に彼は「業界」に入る前に行きつけだったバーに飛び込んだ。

 

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うっぷんばらし 第1話第2話

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