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現代ドラマ

鈴子 第十回 受け継がれる思い

   

俊夫はゲラ刷り原稿を「300万で買い取れ」と恐喝されていたが、「待てるのはあと3日だ」と、いよいよ追い込まれてしまった。

だが、偶然にもその現場を鈴子と政策担当の金子秘書が目撃していた。

「個人的な問題だから、立ち入るべきではない」と距離を置こうとする健一に、鈴子は「そんな考えは間違っている。困っている人をどうして助けないの?」と反論した。

事務所の山形所長もと俊夫を助けることに賛成だった。

山形所長は言う、「一人の幸せは皆の幸せ、一人の不幸は皆の不幸」と。それは亡き父、大木健之助の考えだった。

思いは受け継がれていた。

健一は鈴子や山形所長に、人のために働くとはどういうことかを教えられていた。

 

 
上司の追及
 

「吉岡君・・吉岡君!ぼやっとして、どうしたんだ?」
「あ、いや、す、すみません・・」

俊夫は「300万」と言われたゲラ刷り原稿買取のことが頭を離れず、今朝の秘書室ミーティングで次長から叱られてしまった。

「来週からの社長の北海道出張の件、手配は大丈夫だろうな?」
「は、はい。管理部に連絡してありますから。」
「連絡しただけじゃダメだ。間違いがあるかもしれないから、ちゃんと確認しておけ。」
「分かりました。」

俊夫はノートに指示事項などを書き込んでいたが、やはり例のことが頭に浮かんできた。

  来週は水、木は社長と一緒に北海道だ・・
  俺のいない間にあいつらが来て騒がれると厄介だから、
  今週中にけりをつけておかないと・・

「じゃあ、今朝の打ち合わせはこれで終わります。」

ミーティングは10分ほどで終わったが、「吉岡君、ちょっと。」と次長から呼び止められた。

「おい、どうしたんだ?『心、ここにあらず』って感じだぞ。」
「すみません、ちょっと考え事をしていまして・・」
「何か困ったことでもあるんじゃないのか?」
「いえ、そんなことはありませんが・・」
「そうかあ、それならいいんだが・・」

次長は残っていたコーヒーを飲み干していた。

「ちょっと気になったんだが、奥さんにつきまとっていたチンピラ、受付にも来たって話を警備の者から聞いたんだが、本当なのか?」
「あ、あれは・・」

妻にガードマンをつける話は管理部には「内密に」と念押ししていたが、次長には報告されていたようだ。また、先日、青木弥生と近藤哲が会社に来た件も、面会票は握りつぶしていたが、警備会社からは「不審人物」として報告が上がっていたらしい。当然と言えば当然だが、青木弥生とのことは絶対に公にしたくはない。

 

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