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風刺 / ユーモア

うっぷんばらし(下)

   

口車に乗せられた形で散々な目に遭った木下。

山田の機転によって助かったものの、兄貴分や親分の陰口を叩き、挙句秘密を暴露することになったのだから当然だが、組からは破門され、昔からの友人たちも彼には寄り付かず、孤独と言っていい日々を過ごしていた。

悶々とした日々を過ごしていた木下だが、ある時「うっぷんばらし」の需要に気付き、今後は自分が胴元となって運営を始めるが……。

 

「お、おい。もうちょっといいじゃねえか。せっかく菓子折りもあるんだし、少しは話でも……」
「すいません、木下さん。俺らもオヤジたちに義理がありますんで。本来だったら、ここに来るってだけでマズいんです。長居は無用ってやつですよ」
 最低限の見舞い品とばかりに、小さな造花といくばくかのお菓子類を置いて、後輩たちは病室を出て行った。
 残される木下は、まだ包帯も取れないというのに、孤独を強いられる形となる。
 頼りの山田は、頼りになり過ぎるが故に「海外出張」に行っており、その山田も「しばらく大人しくしろ」と新たなネタをくれたりはしなかった。
「まったく、どうしようもねえよな……」
 木下はうなだれていた。確かに元々大したことのない立場だったが、今ではジュース一本買って来てくれるような後輩もいない。
 もちろんヤクザは縦社会、ある程度年数をこなしていけば本職にはなれずとも「下」の人間は集まってくるものだが、木下のもとにつく人員は皆無だった。
 元々人望がなかったところで、「悪事」をバラすという不祥事をやらかしてしまったからには当然だが、しかし騙されて不利益というのも納得のいかない話である。
(これじゃあ、シノギを見つけても手も広げらんねえよ)
 と、心中でボヤきつつタバコの代わりの禁煙パイポを吹かしていると、病室の扉が開いた。戻ってきた弟分たちは、ニコニコ笑って組公認の封筒を見せてきた。
「すいません、これを渡すのを忘れてました。へへ、組長さんからの贈り物だってのにすいません」
「まったくだぜ。相手が俺だってことを感謝せにゃなんねえよ。兄貴相手だったら今頃ボッコボコだからな」
「分かってますって、ささ、中を」
 軽口を叩きつつ、調子良く勧めてくる弟分たちの声にしたがい封筒を開いてみた木下は、思わず心臓が飛び出そうな気分を味わった。

 

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うっぷんばらし 第1話第2話

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