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現代ドラマ

鈴子 第十一回 不信

   

平成25年9月、小学校4年生の娘、小百合は日本舞踊の発表会に向け、熱心な稽古が続いている。

健一は鈴子がビデオに撮ってくれた稽古の様子を見ながら、長唄をうなっていた。

学生の頃から歌などは苦手で、サラリーマン時代もカラオケは避けていたのに、なぜ長唄を?それ以外にも、最近はスーツの好みが変わるなど、鈴子は変な胸騒ぎを覚えていた。

事務所のスタッフ、結城早苗も活動費の使い方にも不自然なところがあることなど、健一の変化に気が付いていた。

彼女は「若奥様があんなに頑張っているのに、どうしてなんですか?」と山形所長に訴えた。

一方、健一も魑魅魍魎とした永田町の付き合いに悩まされていた。

 

 
娘の踊りと夫の変化
 

平成25年9月、残暑が和らぎ、過ごし易い日が多くなった。

「ママ、早くしないと遅れちゃうから。」
「はいはい、分かりました。」

小学校4年生の娘、小百合は来月の発表会に向け、熱心に稽古に通っている。

「よく見て、真似るの。首はこう。」

お師匠さんは一人一人の動きに目を配り、ところどころで曲を止めながら、「指先はこう。」、「はい、腰は落として、こう曲げる。」と間違った所作を直していく。

「静かな動きだからこそ、難しいのよ。」
「自分が出来ないって言われている見たいで、胃が痛くなっちゃう。」

母親たちが小声で囁き合っていたが、鈴子も全く同じ思いだった。

「ねえ、見て、あそこでお稽古している子。」

母親の1人が鈴子たちとは反対側の隅を指差した。

「6年生の丸山利子ちゃんよ。『藤娘』を踊るそうよ。」

師範代が付きっきりで教えている。小百合より2学年上だから、背も高く、当然、稽古に通っている時間も長いが、それ以上に動きの質が違う。稽古用の浴衣ではあるが、振り袖を着ているかのような動きだ。

「さすがね。お師匠さんの秘蔵っ子よ。」
「ほんとう、あれが踊りよ。」
「うちの子が6年生になったら、あんなに上手く踊れるかしら・・」

母親たちからため息が漏れるが、鈴子はそうは思わなかった。

  上手な女の子はいくらでもおる
  小百合、あんたは一生懸命に踊ればええんよ・・

「でも、皆はん、頑張っとります。発表会が楽しみどす。」
「やっぱり鈴子さんね。私たちとは見方が違う。」
「そないなことはありまへん。うちはドキドキして娘の踊りがよく見れへんだけどす。」
「ふふふ、鈴子さんでもドキドキするの?」
「へえ、うちも普通のお母さんどす。」
「あら、そうね、ははは。」
 

 

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  1. 丸山 利子 より:

    思いがけない登場人物でビックリしました、踊りが上手な人物なんですね、良かったです。 今回は(不信)なんですね、健一さんにはブラックな部分は持って貰いたくないのが望みですが これからが楽しみです。

     

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