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ミステリー

スクープはいとも簡単に5

   

 公園で花を売り歩く女性に、ある男性がひとり声をかけた。

「その花は1本いくらなんだい?」

 スーツを着こなす痩身な紳士的な男性は低く渋い声でその女性に視線をむけた。

 花売りの女性は1本150円ですといった。見た目は30代でややふっくらとした体形、フリルのついたエプロンにフランス人形のようなドレスを着用している。ユニフォームなのかもしれない。

「なら全部もらうよ」気前よく男性は応えた。代金を支払うと、その花を受け取ることはせずこう説明する。

「その花をここにいるみんなに配ってあげてほしい。ここですれちがう男女の新たな恋の予感に花を添えたい」

 紳士すぎる男性は、女性や公園にいた人たちに配ってあげた。その紳士的な男性の物腰柔らかい姿勢と言葉に称賛の声で感動が走った。

 はじめてひとの優しさに触れた女性はこれまでいくどもバカにされ、なにもできない人間だと思われてやっと得た仕事だったという。そのために花を売りながらも世間を冷ややかに見ていた。

 男性はまるでその花売りの女性が辿ってきた道、つまりが人生を風貌や表情から読み取ったかのように同情からなるサプライズを申し出たようだ。

 偶然その公園に居合わせ撮影したのが俺だった。無許可で撮影している俺に、女性は近寄って気づかずに一輪の花を手渡した。そこで俺は交渉した。取材していいか。

 女性は感動のまま快諾してくれた。いざ、これをSNSに掲載するとあっというまに話題になった。

 俺は自分が撮ったものはかならずアップする。だからなにがヒットするかはさだかにはわかっていなかった。話題性にあがった意見やコメントをもとに学習していった。世間を取り上げる立場として、その声を聴かないわけにはいかない。そのためにはもっと掲載しては賛否両論の意見を分析して学習していく。向井田とちがい努力に身を馳せていた。

 感動の嵐が夕方のニュースでも取り上げられ撮影した俺自身にもマイクが向けられた。

 ほっとする心温まる話に世間はその公園へと集まるようになった。

 しかし、その後の話だがこの花売りの女性は人気が集まってか、やや傲慢になってしまった。話題性に上げてしまったことで花売りに共感した紳士すぎる男性がスポットがあたる必要があるというのに行方がわからず女性にインタビューがきては報酬をもらっていたらしい。そのため籠に入っていた鮮やかな花はどこか色褪せていた。

 こんなオチがあるのも、またスクープの裏表。それが色濃くでていたため話題はうなぎのぼりで俺は一躍時の人となった。

 

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