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ミステリー

スクープはいとも簡単に5

   

 志野しの 美桜みお(21歳)。現在、大学四年。社会学部専攻。将来に強い思いを抱いている。

 堅実的、世話焼き、いまだに少女のようなあどけない顔をするかわいい女の子で、俺の自慢の彼女。

 将来なんて一歩先の小石すら見えずに躓く俺をいつも叱る美桜だ。しっかりと目を開けて左右を見て下をチラ見しながらしっかりと前を向いて歩くように。口を酸っぱくいつも母親のように躾ける彼女だ。

 東京に上京するなんていうものだから俺は焦った。なんで俺から離れようとするのか。高校卒業後、地元で地道に働けばいいだろうと思った。

 美桜のような女は絶対に東京に出たら騙される。真面目で堅実さがあり、将来を考えて行動しているタイプは、簡単に口車に乗せられ骨密度がスカスカになるまで、すべてを削ぎ落される。

 毒蛇男に纏わりつかれ真紫色になるまで全身を喰いつくされる。

 懸念は危惧となり、俺は美桜を護るために追いかけることにした。ある意味、俺が美桜に憑りついていると自覚しながらも、一緒に上京した。

 東京は思っていた以上におもしろいところだった。いつのまにか東京のあざやかな彩りな世界に憑りつかれたのは俺だった。

 現実に目を覚まさせるのは案の定、美桜だった。だからかもしれない。心の隙間がないのは互いにとってよかったと思っている。

 勉強と俺の躾け。俺の家族からの監視依頼。まったくもって信用されていないのは両親からだったが、それでも美桜はいつも微笑んでくれている。

 この生活がなによりも必要だ。結局護られているのはどこへいっても、俺だった。

 利己的な美桜に頭があがらない。

 彼氏がプー太郎という最悪な恋愛事情にあるため、美桜はしっかりと主軸になって未来を理想どおりに描いて歩む健気で優しい彼女だ。そんな美桜に頼り切っている俺はどう見られどう思われているのか、たまに美桜の黒い瞳の奥をちらっと窺う。

「仕事はどう?」

 気兼ねなく柔らかい声がかえってきた。その口調は幼馴染だからこその深みのあるひと言だった。

「なにが」

 俺はいつまでもぶっきらぼうでありながら幼馴染の美桜のまえでは子供のままだった。

「だからぁー、高校卒業して将来を考えずに好き勝手に過ごして、輝紀のお母さんだって心配しているのよ」

「わかっている、でもしょうがねーじゃん。なにもやりたいことなかっただろ、あの頃は…」

 俺は、美桜に“輝紀”と呼び捨てにされている。幼馴染でも“てるきくん”、“てるきちゃん”、とか敬称がついてもおかしくはない。それだけ甘えっ子で俺の母と美桜は仲が良く、俺の面倒をみるようにいまだ保護下にある立場で物事をいっている美桜だ。

「それでプーの記者の真似事をして、運良く閲覧者の数字を獲って、報道部のお偉いさんの目にとまりスカウトされて、いまでは記者になった。お見事ですこと…、でもそれでも、ほんとうに社会人としての仕事を任せられているとは思えずに落胆気味って、バカなの!」

 性格はおっとりとしているのだが唐突に変異を表す美桜の感情に驚かされる。

 

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