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ミステリー

スクープはいとも簡単に5

   

「いや、そういうことではないのだが…俺だってがんばっている。記者っていうのは実力主義だ。自分でどうにかしかなきゃならない。一人でスクープを獲るのは至難だしさ、だからチームでって思っていたけど、イメージとしてそれがまさか一人でどうにかしなきゃならないというのが方針となっている」

「それって輝紀がこれまでひとりでやってきたこととなんら変わりないじゃない。むしろ土俵じゃないの? あとは狙いどころなんじゃないの?」

 美桜の狙いどころというのは意味がわからなかった。おそらくチャンスをいいたいのだが、それをいってしまうと俺が調子に乗ってしまうとわかっていた。

“チャンスはかならずある。それが訪れるそのときまで俺は遮二無二にやるだけだ!”。

 口だけの男。美桜が俺のイメージを構成すると幼馴染で恋人で、飼育が必要なペット。周囲とはちがった視点で見られているのは俺の成長や育ちなど、何もかもをしっているからだ。

 閲覧数の多さで称賛された華々しい新人報道員だというのに、美桜には子供扱いされている。

 正社員ではない以上、契約だろうとアルバイトだろうと、フリーターのプー太郎と同類に括られている。

 美桜は大学の現役生だ。頭脳明晰で温情がある女子。むかしから面倒みがいい。いつも世話を焼いていたのを叱っていたのが母ではなく美桜のほうだった。

 近所に住んでいた二人の家は両親同士も仲が良く、家族ぐるみの付き合いだった。バーベキューをやったり、キャンプ行ったり、川釣りをしたりと、田舎暮らしの落ち着きのある雰囲気のなかで育っていた。

 高校を卒業と同時に美桜は東京の大学へ進学。一方、俺はやることがなくても美桜を追うようにして上京。東京に出向いてから探すつもりでいた。それでもやることがなく一年間も風来坊な生活、近くで一人暮らしをしていた美桜にお目付け役として監視されていたが、いつも一緒に夕飯は食べていた。

「せめて大学へ進学すればよかったんじゃない? 勉強しながらやりたいことって見つけていくものだし、いまの輝紀はかぎられた時間を無駄にしている。このさきもなにも見つけられないと思う」

 問い詰めるように俺の聴覚を狙って耳鳴りを引き起こしていた。俺にも策がある。なにも考えずに東京に出ようとは思ってなかった。ずっとパソコンが得意だったし機器に詳しかった。唯一の特技だ。

 田舎暮らしよりも都会での暮らしのほうがメディアに関する情報や、日常においても取材クルーが街中に出没するといった場所を観察できる。そういう地道な観察を一年ほどやりながらSNSにいろいろな記事を書いていった。そして携帯電話のカメラで撮影したり、画像をSNSにアップして公開してはファンを集めていった。一年で見事にその成果を上げていった。

 ほぼ毎日だ。毎日というのが効果覿面だった。

 彼女はそのときだけは関心して称賛の声をあげてくれた。おそらく初めてかもしれない。美桜に褒められたのは。その活動力をこなすだけの忍耐心は見上げたものだと、俺はうっすらと顔が熱を帯びて照れていた。

 

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