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ミステリー

スクープはいとも簡単に6

   

「スクープをとってから罵声を吐いてみろ。それまではその舐めた口は閉じておけ」

 向井田は去っていった。悔しさは心や腹の中に溜めていくしかない。へどろのような憎悪はいつしか化身となって、この身を変貌させるかもしれない。

「みてろよ、目には目を、歯には歯を、そしてスクープの捏造と不正には大義名分だ」

 スクープになる事件を自分で行っている自作自演。向井田のしでかしていることは報道記者としてご法度だ。違法だ。日々、嘲笑うようにスクープを作っては全国に発信しているが、それは報道部内でスクープを捏造している事実をつきとめられたら終わりだ。

 向井田は懲戒解雇になるのは確実だろう。これは犯罪の領域まで手を染めた以上、解雇どころか逮捕となる。

 俺はそうなればいいなと思っている。前科者になってもらいたい。それほどの目障りな存在だ。他人の不幸を喜悦しているわけではない。それだけ個人的にむかつく。そう思うだろ、誰だって。

 唯一、これで向井田に打ち勝つことのできる要因となった。もはや勝負ではない。こんなどうしようもないナンバーワンと対峙する意味すらない。競うランナーではない。野次馬にすぎない。

 俺はがっかりした。こんな決着のつきかたに落胆さえしていた。

 向井田が鼻につき目障りでしかたがない…といったが、俺は奥歯を噛みしめ手を固く握りしめていた。なぜならそれはすべて嘘だからだ。

 本当はあの男の手腕に憧れ、仕事っぷりは学ぶべきことが多かった。それをこんな嫌悪ある空気のなかでは盗めるスキルはなかった。なぜそんなバカなことを言うんだ。

 憧れの眼差しをもって見られていることに気づかれ、いつかその俺の眼差しのなかで不正を見抜かれるとわかっていたのかもしれない。だからあえて誤魔化すようなことを事前に嘘っぽく公言している。笑い話にしておけば真の不正は欺ける。

 疑念の表面化はやはり裏があったんだ。向井田のスクープは不正で起こした捏造だということ、すべて事実だ。

 ちょっと調べればわかることだ。それに奥の手がある。もし警察がダメなら、大事にする方法がある。俺は記者だ。まだ新米だがニュースにすれば警察も動かざるを得なくなる。

 問題は大事にするにかぎる。はじめは些細なことでいい。証言をとるうちに報道部一のスクープ記者とされる向井田の素行とプライベートの奇行に法的な監視の目がつく。記者としての表の顔、その裏には不正を施していたことが明るみになるだろう。

 そうなれば、向井田は終わりだ。

「そのためには、味方を一人つけるしかない。やつの罵りを一発で撥ねかえすだけの存在に…」

 

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