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幻想 / 夢幻

不忘夜話2・教室の花子さん(前)

   2018年7月6日  

“山田花子”、平凡な名前ではあります。

 

 
 諸般の事情により、一部名前を伏せて書きますのでご了解ください。
 私は、小さな会社を経営しています。
 受験関係の学習や情報をスマホで提供する会社で、5年前に起業したのです。
 おかげさまで、順調に業績を伸ばしています。
 起業するとき、アイデアは豊富にあったのですが資金はゼロでした。
 いろいろな会社を訪問して資金提供をお願いしたのですが、どこでも、けんもほろろに断られました。
 最後に訪問した情報教育産業の大手の会社から資金提供を受けて、ようやく起業したのです。
 その会社の社長のDさんと面談していたときのことです。
 私は、教師の経験もある、と説明をし、K学園でも教えたことがある、と話ました。
 Dさんの顔色が変わりました。
「K学園?」
「はい、1年ほど非常勤をしていました」
「ほう……、山田花子さんを知っているかね?」
「はい、見たこともあります」
 Dさんは納得したような顔で頷きました。
「よし、分かった。君の起業を応援しよう」

 Dさんの話によると、10年ほど前、K学園が経営困難になったとき、Dさんの会社がテコ入れをしたそうです。
 Dさん自身が理事長として学校を経営しました。
 それで山田花子さんのことを知ったのだということです。

 私が山田花子さんを知ったのは日大の理工学部を卒業してから2年後のときでした。
 私は、学生時代から受験関係の仕事で起業するのが夢でした。
 大学を卒業したあと、教授にお願いして研究員にしてもらいました。
 その資格で塾などでバイトをして資金を貯め、簿記や経営の勉強もしていたのです。
 5月のゴールデンウイークが終わったころのことです。
 教授から呼び出しがありました。
「何でしょうか?」
「私立のK学園で理科の非常勤を探している。緊急なんだよ」
「K学園? 場所はどこです?」
「東武東上線だ」
「ちょっと遠いですね」
「まあな。でも、歴史の古い名門校だから、腕を磨くにはいいと思うよ」
「緊急って、今からですか? 中途半端な時期だけど」
「理科の先生が事故で急死されたそうだ」
「それはそれは……」
「だから、あわてて人を捜している。君なら教員免許を持っているし、経験もあるから、最適だ」
「そういうことなら報酬を少し増やしてもらえないかなぁ……」
「キミがそう言うと思った。私に抜かりはない」
 

 

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