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幻想 / 夢幻

不忘夜話2・教室の花子さん(前)

   2018年7月6日  

 
 彼らは次のような話をしてくれました。
 昭和30年代ころのことです。
 山田花子という生徒がいました。
 彼女は、少し知恵遅れのところがありました。
 中学生になっても、掛け算の九九がよく分からないのです。
 漢字も、ほとんど書けません。
 授業中聞いたことは、終業のベルと同時に忘れてしまいます。
 それに、体格は小柄で、まあ人並み以下の器量です。
 こういう生徒ですから、小学生のころから、何かにつけていじめられていました。
 両親は、心配して私立のK学園に入れたのです。
 公立よりは、まだしもマシかもしれない、と思ったのです。
 幸いなことに、私立校へ入れるくらいの財政的な余裕はあったのです。
 K学園でも、いじめはありました。
 ただ、彼女が“知恵遅れ”というのが幸いしていました。
 いじめられたときは泣きますが、すぐにケロっとして、みんなと一緒に遊びます。
 明るい性格でした。
 周囲の生徒たちは、てきとうにバカにしながら、てきとうに仲間として付き合っていたのです。
 ちなみに彼女はB組でした。
 そのまま3年生まで持ち上がりです。
 担任の先生はEという人で、担任も持ち上がりです。
 E先生は、上手にクラスを運営していました。
 てきとうに生徒たちを操縦し、山田花子へのいじめがないように気を配っていたのです。
 また、彼女の父母とも話し合いを重ねました。
 当時は、まだまだ、女性は結婚して家庭に入るものだ、という思想が支配的でした。
 でも、さすがに山田花子に結婚は無理でしょう……。
 独りでも生活できるような技術を身に付けさせたほうがいい……。
 そもそも、彼女が得意なことは何だろうか……。
 例えば芸術など、彼女が夢中になるものはないか……。
 こうしたことを話し合っていたのです。

 そのうち、E先生は妙なことに気が付きました。
 
 

≪つづく≫

 

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