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現代ドラマ

鈴子 第十二回 巧妙な絡繰り

   

 
健一の父親の時から、政治家の付き合いをつぶさに見てきた山形所長の言葉だから、きっとその通りなのだろう。だが、夫の変化までを説明できるものではない。鈴子の顔からは不信とまではいかぬが、不安が消えていなかった。それを感じ取った山形所長がすかさずフォローする。

「鈴子さん、健一さんだよ。あなたが心配するようなことは無いと思うよ。」

山形所長も確信があった訳ではない。帳簿記載の支払い先を見れば、特定のクラブに偏っている。健一の父親、健之助もそうだった。鋭い雅代は気が付いていたが、銀座に馴染みホステスがいた。健一だってどうだか分りはしない。だが、鈴子は雅代と違って、真面目で純粋だから対応は違ってくる。

「不器用な健一さんが、鈴子さん、あなたに隠れて女遊びをすると思いますか?」
「いえ、うちはそないなことは・・」
「安心しなさい。健一さんはあなたが信じている通りの男だ。だけど、天下の国会議員が野暮ったいスーツを着ていたらおかしいでしょう?スーツの好みが変わったのではなく、先輩議員を見て変えただけですよ。」

山形所長はこう言い切った。そして、普段と変わらぬ穏やかな顔で「大丈夫、大丈夫。」と繰り返していた。

鈴子は100%不安が消えた訳では無かったが、信頼する山形所長の顔を見ているうちに気持ちが落ち着いてきた。そして、「所長はん、所長はんがいてくれて、うちは安心どす。」と山形所長の手をぎゅっと握っていた。

 

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