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風刺 / ユーモア

俺たちのモクサン(5)

   

「オラッ、殴り収めだ。覚悟しろ、篠田!」
「そのクビ貰った!」
「てめえを潰してやるぜ!」
 と、バンバン攻められ続けるのには閉口するものがあった。
 もっとも、ある程度「しっかりと仕事」をしても咎められる心配がない相手だったのは良かったし、スローモーな金属バットをぶん殴り返して、相手を吹っ飛ばすのは、なかなか気分が良かったのも事実だ。
「どうなってんだこりゃあようっ。誘蛾灯に寄ってきてるってのか」
「今日が最後ってんで、もう全員出張って来てるんだろうぜ」
 もっとも、いかんせん数が多過ぎる。
「気合い」を全開にしていれば倒れる心配はないとは言え、無遠慮な連中から好き放題に殴られたために、体全体が痛いし、ミシミシ変な音が鳴っている感じがする。
 ほとんどの連中が俺に集中してきたのに、杉下たちもボッコボコになっているあたりで、攻撃のヤバさが分かろうというものだ。
 しかしその中でもキれずにやり切れたのはファインプレーだった。
「もう、帰るっきゃないっすよ、正直言ってよ! 俺らぐらいっきゃ残ってねえぜ。何が狙いなのか知らんが、さっさと中の人間も込みで退かないと……」
 ヘロヘロになった俺たちは、互いに肩を寄せ合うようにして、どうにか部室棟の奥まった場所にある天文部部室に戻ってきた。
 しかし、ドアを開いた瞬間俺は、モクさんに伝えるべき恨み言のすべてを頭から消し飛ばしてしまっていた。
「よう。随分時間がかかったな。まだ生きているとは驚きだったが……」
 そこに立っていたのは、教頭の西川だった。
 二メートル以上の背丈とスーパーヘビー級の巨体を覆う服のあらゆるところには返り血がついていて、その傍らには中高年者たちがまるで荷物のように積み重なっている。
 手足を逆に捻られた者も多く、詳しくみるまでもなく彼らの怪我は深刻なのが分かった。
「何の狙いがあったか知らんが、もう貴様らモク師は終わりだ。塀の中で、傷が治るのを待つことだな。チャンスが来ないことを知りつつ……」
 言いつつ西川は、傍らで倒れている一人のモク師の手首を、簡単に砕いてみせた。低く悲痛な呻きが耳に響き、しかも西川はにやりと笑ってみせたのだった。
 
 

≪つづく≫

 

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