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幻想 / 夢幻

不忘夜話2・教室の花子さん(後)

   

“超能力”、というものかどうかは分かりませんが。

 

 
 山田花子は、少し知恵遅れのところがありました。
 試験では、ほとんど零点です。
 本当に分かって書いた答えが1つか2つ、選択問題で偶然合ったのが1つくらい。
 100点満点で10点、というようなものだったのです。

 ところが、あるとき、歴史の問題で正解の“三浦按針”を正確に答えていました。
 E先生はおどろきました。
 三浦按針は、江戸初期に日本へ来たイギリス人です。
 家康から日本名をもらい、外交顧問として活躍した人です。
 授業中に確かに説明はしたのですが、信長、家康などのビッグネームに比べれば無名です。
 生徒たちにしてみれば、こんな名前は覚えなくていいだろう、と思うレベルの名前です。
 実際、解答用紙に“三浦按針”と書いたのはクラスで4人しかいませんでした。
 そのうちの1人が山田花子です。
 授業で話をしたときに、なぜか印象に残り、覚えていたのだろうか?
 それにしても、よく正確に“三浦按針”と書けたな、思いました。
 なにしろ“とく川家やす”と書くくらいのレベルなのです。

 次は理科の試験でした。
 速度の計算問題で、山田花子は答えを“ルート7”と書いたのです。
 実は、この問題には不備がありました。
 誤答をしても当然だったのです。
 しかし山田花子は、不備を補って正確な計算をした、としか思えません。
 てきとうな数字を書いたら偶然正解だった、ということは、まず考えられません。
 てきとうな数字なら、1とか5とか書くでしょう。
 てきとうな数字としてルート7を思いつくことは、まずありえません。
 それに山田花子は、ルートの意味すら分かっていないのです。

 E先生は首を傾げました。
 どういうことなのだろう。
 カンニングしたのだろうか?
 彼女は、試験が始まると、10分もしないうちに机に俯して寝ています。
 そのまま、終了のベルが鳴るまでは起きません。
 カンニングかもしれないような挙動不審はないのです。
 それにそもそも、山田花子にはカンニングするほどの意欲もありません。
 E先生は、それとなく山田花子に聞きました。
 どうやって答えを出したのか?
「そのう……、答えが……、パッと……」
「パッと?」
「パッと、答えが見えたんです……」
 山田花子は超能力のようなものがあるのかもしれない……。
 E先生は、山田花子を、これまでとは別な意味で注視するようになりました。
 

 

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