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幻想 / 夢幻

不忘夜話2・教室の花子さん(後)

   

 
 しばらくして、K学園とL校の野球の試合が近づきました。
 長い伝統のある試合です。
 野球部の中でも、この試合に出られることは名誉あることでした。
 そして、B組のF君が試合に出ることになったのです。
 B組のみんながF君の快挙を喜び、騒いでいたときのことです。
 山田花子が近寄ってきました。
「F君、がんばってね」
「おう、ありがとう」
「がんばれるように、アタシがチューしてあげる」
「おまえのチューなんて、いらないよ」
「いいじゃない」
 山田花子は、F君にかじりつくと、頬にキスをしたのです。
「あっ、バカ、やめろ……」
 周囲の生徒たちは、大笑いしてはしゃぎました。
「いいぞ、山田、もっとチューしろ」
「F、どんな気持ちだ」
「おまえ、チューされたから、もう山田と結婚するしかないぞ」
「結婚式には招待してくれよ」
 E先生も笑いながら見ていました。
 そして、F君は試合で大活躍しました。
 ホームランを打って逆転勝利を導いたのです。
 まさか……、山田花子はFの活躍を予測していた……。
 E先生は考え込みました。

 3年生のときの夏休み直前、山田花子は死んでしまいました。
 校舎の隅で、青い体操着を着た姿で死体が発見されたのです。
 警察の調べでは、校舎の屋上を歩いていて、足を滑らせて落ちたということでした。
 なぜ校舎の屋上を歩いていたのか?
 生徒たちは、Gたちの仕業だろう、と思いました。
 Gというのは、学校の中でも一番のワルの生徒です。
 Gはグループを作って悪いことをしていました。
 山田花子にもいじめを繰り返していたのです。
 Gたちがそそのかして、山田花子に屋上を歩かせた……。
 これは十分に考えられることでした。
 でも、証拠はありません。
 結局、山田花子は事故死である、ということで落着しました。
 ところがGが白状したのでした。
 夏休みになって、Gは病気になりました。
 校庭で騒いでいて、バッタリと倒れたのです。
 最初は、日射病だろう、と思われました。
 しかし、直りません。
 ただただ、高熱を出して苦しんでいるのです。
 朦朧とした意識の中で、Gは繰り返しました。
「山田、俺が悪かった、許してくれ……」
 そして9月になり、Gは死にました。
 最後の言葉は、
「山田さん……、ごめんなさい……」
 ということでした。
 なお、Gのグループの他のメンバーも夏休み中に身体を壊しました。
 高熱が出てうなされました。
 でも、さすがに死ぬことはなかったのです。
 彼らは、夢の中に山田花子が出て来た、と友達に言いました。
 そしてこのことは、学校中に広がりました。
 

 

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