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幻想 / 夢幻

不忘夜話2・教室の花子さん(後)

   

 
 それから半年後のことです。
 卒業試験も終わり、各人の進路も決まったときのことです。
 B組では、E先生が話をしていました。
 これから卒業までの日程。
 卒業に当たっての事務手続き。
 卒業式の手順。
 こうしたことを説明したのです。
 なにしろもうすぐ卒業ですから、みんな、和気あいあいとした雰囲気です。
「……、ということだから……、何か質問はない?」
 E先生が聞きました。
 しばらく、クラス中が沈黙しました。
 卒業を待つだけの、楽しい沈黙です。
 そのとき、後ろから声がしました。
「先生、アタシ、卒業できませんか?」
 みんなが振り向くと、そこには山田花子が立っていました。
 青い体操着を着ています。
 クラス全員が凍り付きました。
 E先生は、これを予測していたのかもしれません。
 落ち着いた声で言いました。
「山田、おまえは学校に残ってくれ」
「なぜですか?」
「おまえは超能力がある。それで学校を助けて欲しいんだ」
「ああ、そうか……」
「これから、B組にはおまえの机と椅子を用意する。出席簿にも名前を書いておくよ」
「1年B組、2年B組、3年B組、となって次はまた、1年B組ですね」
「そう、こいつらは……」
 E先生は、クラス全員を指さしました。
「こいつらは普通だから、もう出ていく。おまえは特別だから、学校にいつまでも残ってね」
 クラス全員が、どっと笑いました。
 山田花子も笑いながら消えました。
 E先生は、三浦按針のことから話を始めて、山田花子には超能力があったのかもしれない、とみんなに説明しました。
 みんな、納得しました。

 これ以来、B組には山田花子の席が設けられたのです。
 そして、「山田花子さん」と“さん”を付けて呼ぶようになりました。
 学校が危機のときは山田花子さんが助けてくれる……。
 山田花子さんが現れたときは、何かいいことがある……。

 10年前に経営困難になったときは、山田花子さんが現れてDさんの会社が助けてくれる、と言ったそうです。
 Dさんは、伝統あるK学園のためなら一肌脱ごう、と経営再建をしたのです。
 Dさんは、山田花子さんのことを聞きましたが、伝説と思い信じませんでした。
 現実的なやり手の経営者ですから、当然でしょう。
 経営再建が完了したあと、Dさんは潔く理事長を退きました。
 理事長室で荷物の整理をしているとき、山田花子さんが現れたそうです。
 青い体操着で、深々とお辞儀をしたそうです。
「ありがとうございました」

 私が山田花子さんを見たときは、3年生の模擬試験に関係していたようです。
 山田花子さんが出た、ということでみんな模擬試験をがんばりました。
 そしてその年度の入試では、難関校への合格者数が倍増したのです。

 私は、Dさんから資金援助をしてもらって起業し、うまくいっています……。
 これも山田花子さんのおかげかもしれません。

 この話、信じてもらえないかもしれませんが、実話なのです。
 
 

≪おわり≫

 

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