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ミステリー

スクープはいとも簡単に8

   

 美桜が通う大学に潜入した快場だった。とりわけ普通に勉学に励んでいる様子だった。昼時になり空腹のため学食へと赴いた。

 そこで昼食をとっていると美桜が近くに現われた。学友の男子に囲まれて過ごしている。

 快場はその光景を一瞥し、心情おだやかではなかった。あることないことを記事に書いてやろうという野心が込み上げていた。

 

 食堂が目にはいった。空腹だったからどんなものがあるのか立ち寄ってみた。

 多くの学生がすでに食事をしている。読書や教科書を読みながらノートをとっている。喫茶感覚でお茶を楽しんでいる学生。女子が数人いるところはやかましいくらいおしゃべりをしているか、スマートフォンを操作しながら黙っている女子たちの温度差が意外である。

 休んでいるときも勉強ばっかりしているかと思った。目の前にあるのは教科書や参考書、専門書などを空き時間に自習していると思っていた。

「おなじ女子でもこうもちがうものだな。仲間はしっかりと選ばないと、学生生活に影響をおよぼす。これはなかなかおもしろい。人間関係の縮図を垣間見ているようだ。空き時間ほど重要なものはない。そこでさぼっている者は将来の見通しは暗い…、というわけか」

 何の根拠もないことをメモに取り始めていた。たまの休憩時間に談笑したところで差がつくとは思えないが、きっとあの男ならそういうような気がした。

“向井田”、独自に休みなく動きまわっていると聞かされたら見劣りしてしまうのは当然だ。

 食券販売機で醤油ラーメンと半ライス、食後にアイスコーヒーを飲みたいのでこの三品の食券を購入した。

 醤油ラーメン350円。半ライス80円。アイスコーヒー120円。

「これで550円でいいのか。安いな」

 窓際に座り周囲を警戒するように見渡しながら視覚に入るすべての情報を記録しようと必死にラーメンをズルズルと音を立てながらも記者魂は怠ることはなかった。

 これはもう癖のようになっている。しばらくして俺はアイスコーヒーを飲みながら、その目に入るすべての情報から削除したい思いに駆られた。

「美桜のやつ…」

 いつのまにか美桜は同学年の男子六名のグループに一人混ざって楽しそうにはしゃいでいた。まるで自分がモテモテのご令嬢のようにその輪の中心の席にいた。

 ホスト通いはこういう形で女の心に淡い火種を残していくのではないか。そして脳裏には女でもハーレム気分の憧れを残像としてひそませている。

 俺の眼光が鋭くその一帯に睨みをきかせていた。

「あいつ、大学では社会につながる勉強と言っていながらも、合間ではこれまでにみせたこともない顔で男たちに媚を売っているようじゃないか」

 下卑た感情が俺の心を嫉妬の色に染めていった。

「純粋に、誠実に、一瞬たりとも自分の意思を見失うな。そうでなければどうなるか、おまえはだれの彼女であるか、忘れたが最後だ、思い知らせてやる」

 眼光の鋭さに磨きがかかった。その視線の先の対象者を切り裂くように。美桜の衣服は無残にも切り裂かれ、辱しめを間接的な刑に処されることになるだろう。

 そこに女子が数名駆け寄ってきた。

 

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