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コメディ

ゾンビは色々解決する(2)ゾンビは人手不足を解決する

   

緊急度が高い大怪我や重病を担当しない町のクリニックでは、病院の内外が社交場のようになることがあるが、「新井クリニック」もまた同様だった。

何しろ、皆例外なく「死」を経験しているだけに、少々のことではパニックにならない。

とは言え、長々と無駄話に費やすのも問題があると、話を聞くための「カウンセリング室」を作った里美だったが、いざ運用を開始してみると、過労死しても即職場復帰する、仕事の鬼である小川たちがクダを巻く結果となった。どうやら妙に仕事がないらしい。

病院に居座られても困る里美は、ゾンビたちを采配して理由の解明に力を注いでいくが……。

 

 とある廃村の「メインストリート」に位置していた廃病院には、やたらと気合いの入った筆書きの看板が掲げられている。
 その名も新井クリニック。
 内科的に色々な容態を調べ、装置を使って外科的な治療もちょいちょい行うという、典型的な町の医院といった雰囲気の病院だ。
 もっとも、この病院を切り盛りする新井 里美は医師の免許を持っておらず、たまに来る看護師たちも同様にモグリだったが、法律違反に問われることはない。
 何故ならこの病院は、ゾンビだけを診察対象にしているからだ。人間でも動物でもないだけに、何となく法律からはスルーされているのである。
「こんにちは、新井先生っ。やっと僕の推しがセンターになったんだ。フルで観に行くからコーティングお願い!」
「やあ、里美ちゃんお久しぶり。最近どうも肩の調子が悪くての、カチっと仕上げて欲しいんじゃよ。ほら、やしゃごが甲子園に出たって言うんでな、もう絶対三振に取ってやりたくて」
「はいはい、後回しでいいかしらね。よっぽど汗をかかない人でも、この最高気温が四十二度って時に超満員の会場に入り浸ってたら臭いはするはずだし、いくら高齢化社会でも、百五十歳のおじいちゃんが年齢と同じスピードのボールは投げられないはずだけどね」
 もっとも、カテゴリーはともかくとして、ゾンビ化したために、やたらと肉体が丈夫になった上、「死」さえ経験して怖いものなしになった面々とあって、理想は高く要求は明確で、何より話が長い。
 しかし、時間に拘束される人間がゾンビ流の長話に付き合い続けることは難しいが、無視し続けるのもしのびない。
 そこで里美は空き病室を改装して、カウンセリングルームを設置することにした。
 どんな極悪人の話でも大丈夫という耐久力の強いカウンセラーを招き、そこに時折は里美も加わることで、よりメンタル的な態勢を整える形にしたのだ。
「いやあ、本当に参ったよな。最近不景気でさ、日本は一体どうなっちゃうんだか……」
「まったくこれでは、終いには大勢死者が出るってもんですよ。ま、確かにそこからがスタートですがね、単なる野良じゃ始まりもしないんです。今時の子たちはザリガニも捕れないんです。タンポポの有効活用方法だって知らない」
「いや、それは違うよ加藤さん。だって僕も知らないもんね。今年で百五十歳になるけど……」
 とは言え、人知れずわざわざ元気に病院にまで来て、他人と喋りたいという死をも恐れる集団である。
 治療につながるような有意義な会話は少なく、ただ愚痴だけで時間が流れていく感じである。
 しかし、時間のカラ回しに、はいそうですかと付き合っていても里美の寿命は尽きてしまう。糸口を見出すのが大切なのだ」
「なるほど、つまりは仕事がない、と。でもさ、時間には影響されないんだし、そもそもお金っているわけ? 私はいっつも現物支給だから、ちょっと感覚が薄くてさ」
「とんでもないことですぞ、里美さん。それはとんでもない勘違いじゃ」

 

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シリーズリンク

ゾンビは色々解決する 第1話第2話第3話

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